鉄道の自動化、運転士より先に「車掌」が消える 運転の負担が減る分、車掌の仕事を肩代わり
ATO導入で運転士の作業は大幅に軽減される。そのためATO導入は、ドア開閉など従来は車掌が行っていた業務を運転士が行うワンマン運転とセットになることもある。東京メトロでは丸ノ内線、南北線、副都心線などでワンマン運転を行っている。
「ATO運転中も運転士は前方を注視しているので、車掌業務を合わせると運転士の負担は従来よりも増えているはず」(鉄道関係者)という見方もあるが、車掌が乗車しないことで人出が減る分、ワンマン運転は鉄道会社の経営改善に寄与している。
現在、国土交通省はICT(情報通信技術)を使った線路内の監視や、異常検知の実用化について検討している。技術革新により線路上の安全性が今まで以上に確保されるようになれば、ATOを導入しワンマン運転に切り替える動きが加速するかもしれない。
山手線の試験走行では、ヘッドアップディスプレイも採用された。運転席の前面のガラスには運行速度などの情報が映し出され、運転士は前方を注視し続けていた。計器に視線を落として前方のトラブルを見過ごす、といったリスクを回避できるのだ。こうした技術も安全性の向上や運転士の負担軽減に寄与しそうだ。
そう考えると、ATOの導入でまず削減されるのは、運転士ではなく車掌ということになろう。
車掌を経ずに運転士になれる制度も
JR東日本がジョブローテーションの見直しを進めている。さまざまな見直し項目の中には、「運転士」「車掌」といった職名を「乗務係」「乗務主任」などに統一するという内容も含まれている。
従来は、運転士になるためにはまず車掌を経験する必要があったが、見直し後は、車掌を経験しなくても運転士になることが可能となる。また、従来認められていなかった駅配属の中途採用者も運転士になることができるという。2020年度の開始が目標だ。
見直しの目的は「社員がいろいろな経験を積むことで輸送サービスのレベルアップを図ること」(同社)だが、人手不足、IT技術の進展といった日本経済全体を取り巻く状況が、鉄道業界の「働き方」にも変容を促している。
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