「70歳以上」まで働いても年金額は増えない? 複雑な「年金と年齢」の関係をすっきりさせる
では、なぜ今のタイミングでそういう試算をするかということですが、今年は5年に1度の公的年金の「財政再計算」の年に当たるからです。
財政再計算とは、いわば「年金制度の健康診断」で、その結果に応じて制度の見直しや改正につながる重要な検証作業です。前回は2014年に実施されましたが、5年前のこのときも、ある試算が行われました。
それは、現在の原則60歳まで厚生年金に加入して65歳から受け取るという一般的なモデルに比べて、70歳まで加入し、受け取り開始を70歳という制度に変えたとすれば、どうなるだろうか?という試算です。結果はどうなったか。現役時代の収入の何割を年金でカバーできるかという「所得代替率」は、70歳加入、70歳支給開始とすることで何と86.2%にもなるのです。(第21回社会保障審議会年金部会 資料2-1「国民年金及び厚生年金に係る 財政の現況及び見通しの関連試算」13ページ)
「支給開始年齢」が今すぐに引き上げられることはない
現在の公的年金制度は55歳定年、平均寿命が65歳という昭和30年代頃に設計されました。「人生の晩年の5~10年を賄う」という前提で設計された制度なのです。平均寿命が80歳を超え、「人生100年時代」といわれるようになった今、その制度を維持していくのはかなり無理があります。
もちろん、これまで平均寿命の伸長によって制度の見直しはされてきました。しかし今後、70歳や75歳まで働くという人も増えてくるはずですから、それに合わせて制度を再構築する必要があります。
ただ、年金の支給開始年齢がすぐにでも引き上げられるということにはなりませんから、あわてる必要はありません。今後の自分の仕事や生活のスタイルによって、働き続ける年齢や、年金の受け取り時期・方法をより柔軟にしていこうと考えればいいと思います。新聞報道で出てきた試算は今回の財政再計算に伴って実施されることになると思いますが、6月頃にはその結果が出てくるでしょうから、注目したいと思います。
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