儲からないのに「シェアオフィス増殖」のなぜ 貸会議室大手・TKP「500億円買収」の狙い
沸騰するシェアオフィス市場だが、実態は「収益性に疑問符が付く」(不動産筋)。通常のオフィスであれば、法人テナントが一度入居すれば中長期的に安定した賃料収入が見込める一方、個人が相手のシェアオフィスでは月額会員を積み上げる必要がある。会員の入れ替わりも激しく、収益が安定しない。
住友不動産は2014年10月、本社を置く新宿住友ビル内にシェアオフィス「World Lounge」を開業したが、翌2015年12月に閉鎖した。同社は「シェアオフィスについては研究を続けているが、今は主力のビル賃貸に力を入れる」と距離を取る。1等地のビルに集中して出店するウィーワークも赤字が常態化。当のIWGも新規開業費がかさみ、営業利益はここ数年伸び悩んでいる。
シェアオフィス単独のビジネスは厳しい
実は、TKP自身も2017年4月にベンチャー企業向けのシェアオフィス運営会社を買収したものの、事業が軌道に乗らず手放した過去がある。成長が著しい反面、淘汰も激しいベンチャー企業向けのビジネスは、営業コストがかかる割に収益がついてこなかった。河野社長は「シェアオフィスを単独の事業として運営するのは難しい」と振り返る。
不採算事業であるはずにもかかわらず、各社はシェアオフィス事業をなぜ拡大しようとしているのか。それは、シェアオフィスはその後に続くビジネスの「入口」にすぎず、月額利用料そのものを収益源にしていないからだ。IWG自身、他社と比べて優位な点について、「シェアオフィス利用料ではなく会員向けの付帯サービスによるものが、売上高のうち29%を占める。これは競合他社の約4倍だ」(マーク・ディクソンCEO)と認める。
三井不動産のシェアオフィス「WORK STYLING」の場合、フリーランスやテレワーカーだけでなく、同じビルに入居するテナントも得意客だ。自社オフィスの会議室が埋まっている場合に同施設で会議を行ったり、オフィスを移転・増床したい企業が仮住まいとしてフロアの一部を月単位で借りたりする場合もある。シェアオフィスは、自社ビルのテナント向けサービスという顔も併せ持つ。
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