儲からないのに「シェアオフィス増殖」のなぜ 貸会議室大手・TKP「500億円買収」の狙い

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ベンチャー企業向けのシェアオフィス事業も、単なる起業支援では終わらない。ベンチャー企業が成長してシェアオフィスが手狭になった際に、シェアオフィスの運営会社が保有する別の賃貸ビルにテナントとして入居してもらうことを見込んでいる。

TKPが今後も成長していくには、貸会議室を新規に出店し続けなければならないが、足下では肝心のオフィスビルに空きがなく、出店の余地が狭まっている。

オフィス仲介会社の三鬼商事によれば、今年3月時点で東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率はわずか1.78%。人手不足ならぬ「床不足」がTKPに立ちはだかる。新築ビルやテナントが移転して空室となったビルに出店攻勢をかけているものの、飛躍的な成長は難しい。

「貸会議室以外」で稼ぐ

リージャスの買収により、TKPがすでに保有する貸会議室11.4万坪に加えてシェアオフィス約2.9万坪が加わった。「リージャスの一部をTKPの会議室に変えたり、逆に稼働率の低い会議室の一部をシェアオフィスに変えていく」(河野社長)といったことが可能になる。TKPとしては、シェアオフィスそのものによってもたらされる収益よりも、リージャスのシェアオフィスを高単価サービスを利用してもらうための「呼び水」にすることを期待しているようだ。

TKPの売上高に占める貸会議室関連売上の比率は年々低下し、2019年2月期にはついに50%を切った。代わりに存在感を増すのは、弁当や宴会、宿泊など会議室の利用に付帯するサービス。今回の買収によって、リージャスの会員向けに上記のサービスを提供していくことも可能になった。

【2019年4月18日18時注記】初出時の記事で「2019年3月期」と記載していましたが、正しくは2019年2月期です。お詫びして修正いたします。

「シェアオフィスは(場所を貸し出すだけの)シンプルなビジネスモデルだと思われているが、実際には複雑なオペレーションが要求される」(IWGのディクソンCEO)。働き方改革が叫ばれる中、自由な働き方を支えるインフラとして重宝されるシェアオフィスだが、収益化には表面では見えない企業努力が必要なようだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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