東京のバリアフリーに足りない「観光客目線」 英語で観光情報を伝える車いす生活者の思い

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グリズデイルさんに聞いた東京のバリアフリーの現状は、交通機関などはある程度整備されているが、レストランなどまったく進んでいない分野もあった。

イギリスでは障害のある人や高齢者などの旅行需要を調査したところ、日本円で年間1.7兆円のマーケットがあることがわかっているという。障害のあるなしにかかわらず、誰もが観光や食事を楽しめる環境をつくることは、ビジネスの面からも将来の投資につながるとグリズデイルさんは考えている。

バリアフリーは「将来への投資」

「バリアフリーにお金をかけるのは無駄なお金ではありません。ビジネスへの投資です。オリンピックとパラリンピックのときはもちろん、10年後には今よりもずっと多くの車いすユーザーが、国内外から観光に訪れるようになるでしょう。そのときに、日本にはユニバーサルツーリズム世界一の国になってほしいと思っています」

グリズデイルさんの活動は年々広がっている。今年2月には観光庁が主催した「ユニバーサルツーリズム促進に向けた実証事業」のパネルディスカッションに、パネラーとして登壇した。こうした活動の中でも、情報提供の重要性を強調している。

「障害のある人の多くは、自分が行く場所のことを事前にインターネットなどで調べます。調べた結果、最初からできないことがわかれば問題はありません。困るのは情報がないことです。情報がないと不安になります。情報提供によってその不安をなくしたいと思っています」

グリズデイルさんは1人でも多くの人が日本での旅行を楽しめるように、今後も情報発信を続けていく。オリンピックとパラリンピック、それに観光客の受け入れに関わる行政や関係者は、グリズデイルさんの建設的な提言に耳を傾ける必要があるのではないだろうか。

田中 圭太郎 ジャーナリスト・ライター

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たなか けいたろう / Keitaro Tanaka

1973年生まれ。1997年、早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年からフリーランスとして独立。雑誌やWebメディアで大学、教育、経済、パラスポーツ、大相撲など幅広いテーマで執筆。著書『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)、『ルポ 大学崩壊』(筑摩書房)。

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