お笑い番組でしつこく「笑い声」が入る深いワケ 私たちはこっそりコントロールされている

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「アイツは腕利きだ。証拠はあるから5年は本当だな。実はおまえ、俺の若い頃に似ててさ。本当はおまえいいやつだよ。俺はおまえの味方だ。今、罪を認めれば減刑を口利きする」

そして容疑者が落ちる、というのは、刑事ドラマでよく見る場面だ。人は相手に好意を持つと、頼みごとを聞きやすくなる。だから容疑者が落ちるのだ。

この刑事はさらに返報性(=コーヒーをおごる)という合わせ技も駆使している。

あるセールスマンと話したときのこと。しきりに「本社が近くですね」「私の名前と一字同じですね」と似た点を言ってくる。

これも親近感を抱かせ、頼みごと(=販売)を通す作戦だ。セールスに顧客との類似性を探す訓練をする会社もあるという。刑事が「俺の若い頃に似ている」と言ったのも同じだ。

この技を防御するには、「依頼内容」と「依頼する人」を区別して考えることだ。「ほかの人がこの商品を販売しても買うか?」と考えれば、冷静な判断ができる。

権威に従ってしまうのは人間の性質

権威……「権威がある人は、絶対に正しい」と思ってしまう

心理学者ミルグラムは「人はどの程度、他人に苦痛を与えられるのか」を実験した。

実験には2人が参加し、「教師」と「学習者」の2つの役が割り当てられた。「教師」の参加者は「学習者がクイズに間違ったら、研究者の命令に従い、電気ショックのスイッチを押すように」と指示された。電圧は徐々に強くなり、最後は気絶寸前になるほどだ(実際には、教師役以外はすべてやらせだ。気絶寸前も演技。電気も流れていない)。

ミルグラムたちは「最後までスイッチを押し続けるのは1〜2%」と予想していたが、なんと3分の2の参加者が、最後まで続けたという。アメリカ以外の国も同じ結果だった。

これは参加者が残酷だからではない。教師役の参加者は「実験をやめさせてくれ」と言いながら、ボス(=命令する研究者)に反抗できずにスイッチを押し続けたのだ。人は権威者の命令には、とにかく従おうとする。権威の持つ影響力は強力だ。

この「権威に従う」という人間の性質のおかげで人類社会は発展してきたが、悪い面もある。人はそれ以上考えなくなるのだ。強制収容所の大量殺戮(さつりく)に多くの人が加担したのも、大企業で不祥事が起こるのも、この仕組みのためだと考えられる。

人は相手が権威を持つかどうかを、肩書(社長や教授など)、服装(白衣やスーツなど)、装飾品(乗っている車など)などで判断する。

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