平成筑豊鉄道「ことこと列車」運行に至る舞台裏

地方赤字線の新列車は9月までほぼ満席

左から、ことこと列車の車両をデザインした水戸岡鋭治さん、平成筑豊鉄道の河合賢一社長、料理を監修した福山剛シェフ(筆者撮影)

かつては炭鉱の町として栄えた福岡県の筑豊地方を走る平成筑豊鉄道、通称へいちく。第三セクターが運営する市民の足だが、人口減少により輸送人員はピーク時1990年度の約342万人から2017年度は約156万人と半数以下にまで減少。苦しい経営が続いている。

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のどかな風景が広がるローカル線に3月21日、観光列車「ことこと列車」が走り始めた。土日祝日のみ1日1便の運行。地元の食材を盛り込んだフランス料理を味わい、沿線の景色を眺めながら、直方駅から行橋駅までの42kmを3時間20分かけて、日本一ゆっくり走る。

車両をデザインしたのは、JR九州のななつ星をはじめ、各地の観光列車を手がけてきたデザイナーの水戸岡鋭治さん。いつにもまして水戸岡さんがこの列車に情熱を注いだ背景には、関係者を取り巻く不思議な縁と思い入れがあった。

河合社長と水戸岡さん、15年来のつながり

へいちくは経営の再生と活性化を図るべく、2017年に社長を公募。88人の中から、当時47歳の河合賢一さんが選ばれた。

河合さんは大分県出身で、小学校の3年間、筑豊の直方で暮らしたことがある。家のそばに線路があり、「いつか鉄道会社の経営に関わってみたい」と夢を抱いた。だが鉄道会社への就職はかなわず、大分県庁に入庁。35歳のとき九州産業交通に転じ、九州産交バスで企業再生に携わった。そうして2017年10月、ついに鉄道会社の社長になったのだ。

社長に就任して1年半が経った河合さん。「列車に乗っていると、沿線の方に手を振ってもらえるのがうれしい」と少年のような笑顔を見せた(筆者撮影)

社長就任直前の河合さんは、期待と不安を抱えながら、ある人のもとを訪れた。水戸岡さんだ。2人の出会いは15年前にさかのぼる。

河合さんが鉄道への熱い思いをしたためて水戸岡さんに手紙を送ると、「上京したら事務所に遊びにお越しください」と返事が来たという。

「いやあ、うれしかったですね。東京に行ったとき、駅にあった電話帳で水戸岡さんの会社の番号を調べて電話をかけ、事務所を訪ねました」(河合さん)

それから上京するたびに水戸岡さんに会い、鉄道談義に花を咲かせた。

そして社長就任の報告に行った日、水戸岡さんから思わぬ話を聞いた。

「へいちくから観光列車のデザインを打診されている」

まさかの偶然がつながった瞬間だった。

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