平成筑豊鉄道「ことこと列車」運行に至る舞台裏 地方赤字線の新列車は9月までほぼ満席

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水戸岡さんは仕事を引き受け、河合さんに「大変そうだが、大丈夫」と伝えた。

ドーンデザイン研究所代表取締役の水戸岡さん(筆者撮影)
ステンドグラスの天井なので、空間が明るく広く感じられる(筆者撮影)

「私から見て、ことこと列車は厳しい条件でした。列車が出発する直方駅は、博多駅(福岡市)や小倉駅(北九州市)からJRで1時間ほどという遠さ……。お客様に来てもらうためには普通じゃダメ。

だけど、予算とスケジュールは一般的な仕事の半分(笑)。それでもクオリティーとオンリーワンを追求しました」と水戸岡さん。

その言葉どおり、完成した車両にはこだわりの特注品が組み込まれ、とくにドイツ製ステンドグラスの天井と、2万2000ものパーツを組み合わせた床の美しさが目を引く。

内装の部品製作や施工を担当したのは九州艤装(きゅうしゅうぎそう)。

ななつ星を手がけた職人が独立して、北九州で2017年4月に開業した会社だ。鉄道車両・バス・船舶の内装部品の設計や製作、施工を行っている。

職人チームは田川郡福智町にある金田駅の車両倉庫で、冬の寒い3カ月間、夜遅くまで車両づくりに没頭した。

ローカル線でこれだけ豪華な列車はない

「地元の仕事と喜ばれて、水戸岡さんが心配するほど頑張ってくださったんですよ」と河合さん。水戸岡さんも「九州艤装としては記念すべきデビュー作だから、最高のものを作ろうという意気込みがすごくて。もっとできますと言われて、図面を描き直したこともある」と打ち明ける。「列車づくりで何よりも大切なのは、関わる人たちの情熱。ローカル線でこれだけ贅沢な列車はほかにないと思う」と水戸岡さんは胸を張る。

深赤色に輝くことこと列車は2両編成。4人掛けと2人掛けの席があり、定員は48名(筆者撮影)

運行前の試乗会の際、河合さんは車内を歩き、停車駅で地元の人にあいさつしたり、沿道の人に手を振ったりと、動き回っていた。

そんな様子を見ていた水戸岡さんは「河合さんは面白い人なんですよ。15年前にくれた手紙には、妻子がいるけどうちで働きたいと書かれていて……。

社長になった今は、列車のテーブルを磨いたり見回ったり、あれこれ心配して落ち着かなくて。昔はそんな社長がいたけど、今はなかなかいない。この仕事を心から愛しているんだろうね」とふと話してくれた。

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