大手のプライドを捨てられない46歳男性の苦悩 40歳で退職、7社転々として現在アルバイト

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「会社に、メンタル疾患に対する理解がありませんでした。勤続9年の私に対し、その後輩は、ごみ箱を蹴飛ばす勢いで、文句を言ってきましたから。たばこ休憩も許されないのか、と思いました。それに、(2社目の)追い出し部屋への異動は、やりすぎだと思います。同じようなミスをしている人はほかにもいましたから」

同じ立場になったとき、私ならどうするだろうと、ふと考えた。

私なら、自分の定時退社のせいで、同僚にしわ寄せがいって申し訳ないと考えてしまうから、たとえ電話番でも、任された仕事は、いつも以上にまじめにこなすだろう。また、オーナーと周辺住民のトラブルは、あらかじめ交わしている契約書に基づけば、容易にジャッジできる問題にもみえた。

私がそう伝えると、ヨシユキさんは「そもそも定時で終われない量の仕事を任せていることや、部署に体調の悪い人が1人いるくらいで、周囲にしわ寄せがいくような人員配置しかしていない会社の問題です。(オーナーとのトラブルについては)オーナーはクライアントでもあったので、あまり強く言うことができませんでした」と主張した。

ふたつめの会社を、文字どおり追い出されたときは40歳。当時の年収は、600万円ほどだったという。その後、不動産会社を5、6社ほど転職したが、いずれも中小、零細規模の会社ばかり。給与水準も福利厚生も、大手企業時代の水準には遠く及ばなかった。

本当に辞めるような理由だったのか?

何より、どこに勤めても、もって半年あまりなのだ。ヨシユキさんによれば、辞めた理由はさまざまだった。

いわく、「支店長が上からの指示を、(自分も含めた)部下にただ割り振るだけだったので、文句を言ったら、“社内失業”状態にされた」「不祥事を起こした前任者の仕事を引き継いだのに、部下や上司からのサポートがなかった」「残業が多く、体力的についていけなかった」「上司が僕よりも年下なのに、『これ、やっといてください』という言い方が威圧的で、鼻持ちならなかった」など。

上司から辞めてくれと言われたり、ヨシユキさん自身の勤怠が不安定になったり、メンタル不調が再発したり――。退職に至る経緯はまちまちだったが、それにしても、簡単に辞めすぎなのではないか。ヨシユキさんによる「(大手企業である)前の会社だったら、ありえないことが中小、零細では起きる」といった物言いも気になった。

気にはなる――。しかし、ここはもう少し、ヨシユキさんの話を聞いてみよう。

こうした転職先は、それでも、ほとんどが正社員としての採用だったという。不採用続きで、失業期間が長引いた時期もあったし、給与水準などは大幅に下がったものの、最後は希望どおり、不動産関係の会社に就職することができた。

潮目が変わったのは、45歳になるころ。採用試験を「受けても、受けても、受からなくなった」。業種にこだわらなければ、正規採用の道もあったが、キャリアを途絶えさせたくなかったヨシユキさんは、ここ1、2年はやむをえず、不動産関連会社でアルバイトとして働いている。

今年2月から働き始めた会社は当初、週24時間勤務で、時給1300円の約束だった。しかし、繁忙期を過ぎた4月からは、週19時間30分勤務、時給1000円にしてほしいと、通告された。「わかったと言うしかありません。嫌だと言ったら、辞めてくれと言われるのは目に見えているので」とヨシユキさん。

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