人質18人立てこもりテロ起こした凶悪犯の正体 2014年12月シドニーで発生した銃撃戦の悲劇

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窓際に立たされた人質。『目撃!超逆転スクープ3 〜戦慄の凶悪犯vs決死の救出作戦〜』は4月13日(土)夜9時~フジテレビで放送(写真:フジテレビ)

窓には、人質が掲げたメッセージ……「去れ! さもないと彼は私たちを皆殺しにする」。

銃と爆弾と人質を前に、警察はなす術がなくビルから引き下がっていく。

「テロリストの要求には一切応じず、交渉により平和的解決を目指す」。警察は終始一貫この方針に従い、最後まで頑なにこだわった。だがこの姿勢が、犯人だけでなく、人質をも追い込み、事件を悲劇の結末へと導くことになる。

犯人は爆弾を持っているという情報を受け、カフェのあるビルだけでなく、周囲2ブロックは全員退避。メディアは規制線の外から生中継をするしかなかった。カフェの向かいにあるチャンネル7も例外ではなく、局内から全職員の退避が命じられる。そんな中、カメラマンのグレッグ・パーカーは、カフェを見渡せる2階のニュースルームにカメラを設置、録画状態のまま局を離れていた。

事件発生から2時間後、グレッグは警察の目を盗み、カメラのバッテリーを交換しに行った。警察に見つかったグレッグが、社屋から追い出されようとしていたそのとき、声をかけてきたのは、特殊部隊のスナイパーだった。

「カフェの窓を監視するのに最適な場所はどこだ?」

「ここから私と一緒にカメラのレンズを通して見るのがいちばんだ」

グレッグはスナイパーとともに、再び2階のニュースルームに戻り、望遠レンズで向かいのカフェの窓を撮影し続けることになった。こうして、前代未聞のスナイパーとカメラマンのタッグによる狙撃作戦が始まった。

数時間後、有名リポーターのクリス・リーズンも特別に局内に戻ることを許された。規制線の中に入ることを許された唯一のジャーナリストとカメラマン。2人は、現場からわずか30mの距離で事件の一部始終を見届けることになる。

犯人の正体と人質たちの闘い 

カメラの映像から、警察が特定した犯人の正体は自称・イスラム教の聖職者、マン・モニス(50)。イラン出身のモニスは複数の犯罪歴を持ち、つねにトラブルを抱えている“有名人”。オーストラリア軍の海外派兵に反対する街頭活動を繰り返し、メディアにも取り上げられていた人物だった。

店内のモニスの様子(写真:フジテレビ)

警察はカフェを取り囲む3カ所にスナイパーを配置。通りに面した4つの窓から狙撃のタイミングを探る。

しかし、窓には“人質の盾”、モニスは店内の“死角”から動かない。

そして背中には「爆弾」が……この状況では、狙撃は実質的に不可能だった。

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