人質18人立てこもりテロ起こした凶悪犯の正体 2014年12月シドニーで発生した銃撃戦の悲劇
ニュースリポーターのクリス・リーズンは、すぐに街の異変を感じ取った。慌ててテレビ局に駆け戻り、カメラマンと一緒に飛び出した。
リンツカフェは、チャンネル7の目の前だ。そして、カメラは衝撃の光景を捉える。
通りに面した4つの窓。そこには両手を上げ、恐怖でブルブルと震える人質たちがずらりと並んでいた。銃を手にした男の姿も見える。
すぐに警察が駆けつけ、クリスたちテレビクルーを押し返す。カフェには、それ以上、近づくことができなかった。
ガラス張りのテレビ局の中から、目と鼻の先にあるカフェの模様が伝えられる。
「生中継で速報をお伝えしています。街の中心で武装した警察官がカフェを取り囲んでいます。中には人質がいます」
現場からわずか30mの場所で、クリスは衝撃の事件の一部始終を伝えることになる……。
市内の3カ所に爆弾 犯人の要求
犯人の男は、店長のトリイにメモを渡した。トリイによる実際の通報音声が残されている。「目の前に立っている男からのメッセージを読んでいます。街の3カ所に爆弾がある。警察は近づくな。近づくと仲間が爆発させる……」。
犯人は複数のグループであり、シドニー市内の観光名所と目抜き通りに爆弾を仕掛けてあると言う。そして3カ所目は、男の背中にあった。
そして、男は2つの要求をしていた。1つ目は、「イスラム国」の旗を用意すること。2つ目は「首相とのラジオ生討論」だった。
男の犯行声明は、嫌でも人々に1年前の「ボストンマラソン爆弾テロ事件」を思い起こさせた。都市を狙った爆弾テロ。オーストラリアが経験したことのない恐怖だった。
犯人は人質たちに携帯電話をテーブルの上に置くように指示。しかし、人質の中には、指示に従ったふりをして隠し持つ者。犯人の目を盗んで携帯電話を取り戻す者がいた。事件発生当時、店内には多くの客がおり、従業員はそろいの服装をしていたことから、犯人は人質の人数を正しく把握することができなかった。
人質たちはトイレに行く際など、犯人の目を盗み、外部との接触を試みる。人質たちは命の危機を感じていた……「人質になっている。すごく怖い。みんなを愛している」(店長)。
警察の特殊部隊が出動し、周囲を取り囲むと、いら立つ犯人は人質に電話をかけさせる。
「今にも誰かを撃ちそうです。お願いだから警察にカフェから離れるように言ってください。急いでください。2分も経てば殺されます」
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