強すぎる安倍政権が「令和」に残した大きな課題 平成時代の経済は後にどう評価されるのか

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安倍内閣が発足して以降の日本は、「最も失われた5年」から「再挑戦の7年」に移行し、経済は明らかによくなった。とりわけその成果は、株価上昇や失業率の低下に表れている。これらの点は、高く評価される。また安倍首相は、G7のトップのなかでもいまやドイツのメルケル首相の次に長く政権を維持しており、国際的な信頼も厚い。しかし平成の末期において、次のような2つの問題を克服する必要に直面していよう。

第1は、政策の実施がともすれば安倍首相・菅官房長官によるリーダーシップだけに依存しており、経済財政諮問会議や規制改革会議に象徴される組織全体による改革になっていないことだ。もちろんこの点は、首相官邸のリーダーシップが強いという利点ともいえる。

「安倍一強」体制の見えない弊害

しかし、いわば改革が「点」にとどまり、「面」に広がらないことを意味している。典型的には労働市場の改革で、労働基準法を70年ぶりに大幅改正し、労働時間のみに依存しない評価システム(高度プロフェッショナル制度)を導入したこと、外国人労働者の受け入れに新たな制度を設けたこと(出入国管理法改正)などが挙げられる。

こうしたことは、首相官邸のリーダーシップがあって初めて実現したことだ。しかし、例えば労働市場改革については、本来は金銭解雇のルール作りなど、より広範な改革が必要だ。また外国人労働者に関しても、より根本的な移民法(移民という言葉を使わないなら「外国人労働法」)制定のような動きにはなっていない。

安倍首相や菅官房長官が「断固としてやれ!」と命じたことは実現するが、その方針が政府として共有され、面として改革が広がっていくという展開にはなりにくい。総じて、各担当大臣のリーダーシップが弱い、という指摘もある。

第2は、いわゆる「一強体制」の弊害で政策のチェック機能が弱まり、尖った政策を避けて安易な政策に流れる雰囲気が、霞が関の官僚を中心に広がってきたことだ。政治の一強体制は、それ自体決して悪いわけではない。政治が安定し長期政権になる中で、外交面では大きなプラスの成果が出ている。ポピュリズムの台頭で政治が不安定化している欧米から見ると、日本の現状はむしろ評価されている。

問題は、一強体制がもたらすチェック機能の低下だ。そしてその責任は、政府・与党以上に経済界やメディア、そして野党にある。

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