「ロジカルな人」の企画が面白みに欠ける理由 「プライベートの思考法」こそ仕事に生かそう

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「感」=「感じ取る」:情報に触れた感想とその理由を探る

「感じ取る」は、五感を働かせてさまざまなものを感じ取ることを言う。例えば、新しい製品を見れば、欲しいとか、デザインがよいとか悪いとか、高そうだとか、売れそうだとかさまざまなことを思う。これらをまず、素直に感じることだ。次になぜそう感じたかを考える。

例えば、数年前にドローンが首相官邸に墜落する事件があった。それを見て何を感じたか思い出してほしい。「危ない」と感じた人の中には、こんなものを勝手に空に飛ばしていたら危険だと思った人もいれば、勝手に撮影されたらプライバシーもあったものではないと思った人もいるだろう。

もちろん、「面白さ」を感じた人もいるだろう。おもちゃとして面白さを感じた人もいれば、手軽に航空撮影ができるようになるのでは、と考えた人もいるだろう。

「勘」=「勘を働かせる」:インパクトを想像する

「勘を働かせる」は、見たり・聞いたり、あるいは感じたことが自分の会社、ビジネス、業界、社会にどんなインパクトがあるのか、想像力たくましく思い浮かべてもらうことだ。その事象は大きくなるのか、あるいは一時的なものか、ビジネスとして成り立つのか、成り立たないのかといったことに勘を働かせる。

ドローンの例で言えば、はやると思った人もいれば、はやらないと思った人もいただろう。あるいは、日本企業からもっと高性能なドローンが発売されるのではないかと考えたかもしれない。しかし、その時点で「自分の仕事、業界でこんなふうに使えるのでは?」と思った人はほとんどいなかったのではないかと思う。

ところが実際には、建設現場や道路の保守、あるいは映画やテレビの撮影用に使われるようになった。結果として、測量業界などはゲームチェンジが起きてしまった。

このように勘を働かせて、自分の業界や事業がどちらの方向にいくのかを考え、あるいはいま起きている事象は一時的なものなのか、世の中を変えるようなパラダイムシフトなのかを判断する。

意識しながら、かつ検証しながら鍛える

観・感・勘を磨くには、仕事でもそれを使うように心がければよいわけであるが、ただやみくもに経験を積むのではなく、ある程度「意識」しながら、かつ「検証」しつつ繰り返していくことが大切である。

今回はビジネスにおける「観・感・勘」の重要性について解説した。優れたビジネスアイデアの起点には人間の右脳的な思考、面白い、ワクワクする、やらなくちゃというような危機感などがあったりするものだ。

内田 和成 東京女子大学特別客員教授、早稲田大学名誉教授

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うちだ かずなり / Kazunari Uchida

東京大学工学部卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。日本航空株式会社を経て、ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000 年から2004年までBCG日本代表を務める。2006年度には「世界の有力コンサルタント25人」に選出。
2006年から2022年3月まで早稲田大学教授。早稲田大学ビジネススクールでは意思決定論、競争戦略論、リーダーシップ論を教えるかたわら、エグゼクティブプログラムにも力を入れる。
主な著書に、『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』『イノベーションの競争戦略』(以上、東洋経済新報社)、『リーダーの戦い方』(日本経済新聞出版)、『アウトプット思考』(PHP研究所)、『できるリーダーが意思決定の前に考えること』(日経ビジネス人文庫)など、ベストセラー・ロングセラーが多数ある。

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