米リフト上場、「国産ライドシェア」は広まるか

都心での配車も可、タクシー業界は猛反発

一見、日本では違法の「ライドシェア」と同じように思われる。しかし、クルーを「合法」にしているのは、乗り手が支払うサービスの対価を「謝礼」と「実費」に限っている点にある。

というのも、助け合いの一環としての送迎やヒッチハイクなどの場合、法律では乗り手が「任意の謝礼」やガソリン代・通行料、駐車代などの実費をドライバーに支払うことを禁じていない。運転そのものへの対価でなく、サービスは「有償」ではないという論理構成である。クルー以外にも、「notteco(ノッテコ)」「ノリーナ」などヒッチハイク用のマッチングサービスは存在している。

「オリンピックで訪日観光客が増えれば、タクシーが足りなくなる。サービス普及の起爆剤になるだろう」とAzitの吉兼CEOは期待する(撮影:尾形文繁)

謝礼はあくまで任意――この原則を守るために、クルーでは車内で謝礼の話題に触れることはドライバー、乗り手ともに禁止としている。Azitの吉兼周優CEOは「安心・安全第一を追求してきた。サービスの設計や安全のためのガイドライン作りでは国土交通省や警察庁と入念にやりとりをしてきた」と語る。

国交省は「合法」でも、タクシー業界は猛反発

実は、国土交通省は2018年3月に通達を出し、インターネットを通じて配車サービスを提供する場合に、①謝礼の支払いを促さないこと②謝礼を払わなくても決済ができること、と合法のラインを明確にしている。国土交通省の奥田哲也自動車局長はクルーについて、「この通達に沿ったサービスであると認識している」と国会で答弁した。事情に詳しい元官僚は「地方や過疎地での移動手段の確保を最重要課題として掲げる国交省としても、大掛かりな法の変更をせずローンチできる配車サービスの必要性は認識している」と解説する。

当然と言うべきか、クルーに対するタクシー業界の反発は激しい。業界の会見や講演などで「クルー問題」として名指しで取り上げている。全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋一朗会長(日本交通会長)は、公式ホームページでクルーに言及し、「評価が低い利用者はサービス提供を受けにくくなる仕組みが残っている疑いがあります」と、間接的な謝礼強要の違法性を指摘している。

Azitはこれに対し、「謝礼0円でも評価やマッチングに影響することはない」と回答している。吉兼CEOは「白タクでもライドシェアでもない。謝礼をベースとしたサービスだ」と説明した上で、「利便性が理解されれば、世論の後押しが得られるはずだ」と自信を示す。

Azitは鹿児島県与論島や長崎県などの過疎地でもサービスを開始。タクシー事業者の反発が強い都市部ではなく、交通の便が悪い地方で支持を固めていく作戦だ。現在、約15の自治体と話し合いを進めており、与党議員へのロビー活動も進めている。

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