北海道夕張支線、二度と響くことのない警笛 「攻めの廃線」は各地でモデルケースとなるか

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JR北海道は2016年7月、人口減少など経営環境の悪化が進む中で「JR単独では維持困難な線区」を同年秋までに示すと発表した。夕張市は対象線区の公表に先立つ8月、JRに対して地域交通整備への協力を条件に夕張支線の廃止を提案。異例と言える自治体からの廃止提案は「攻めの廃線」として話題を呼んだ。

2018年3月、両者は「持続可能な交通体系」再構築に必要な費用として7億5000万円をJRが拠出することなどで廃止に最終合意した。

廃止は寂しいが…

120年以上走り続けてきた鉄道の廃止。地元の人々に聞くと、寂しいことは寂しいけれどほとんど誰も乗っていなかったから仕方ない、バスの便数が増えて便利になれば――との答えが返ってきた。

夕張駅周辺は列車が発着するたびに鉄道ファンや地元住民らでにぎわった(記者撮影)
夕張支線の最終日、踏切で列車に手を振る女性(記者撮影)

「札幌に行くときはいつも7時の汽車。きょうも1時の汽車で友達のところに行った」と、よく夕張支線を利用していたという83歳の女性は、走り去る列車を見送りながら「寂しいわ。がっかりだよ」と言いつつ「でもいつも私1人だったから、しょうがないでしょ」。

夕張駅から徒歩10分ほどの場所に住むという66歳の男性は「こっち(市)のほうからJRに申し込むなんてね、寝耳に水だったね」と市による廃止提案時の驚きを語るものの、「まあ、どの便も2人くらいしか乗ってなかったからね。(自分も)めったに使わないし去年は乗ったことないから。残念は残念だけど仕方ないね」と受け止める。

男性は車を運転しないものの、普段の交通手段はバス。列車は1日5往復だったが、廃線後の代替交通となるバスは10往復に増えるため「便利になるね」と期待する。夕張高校に通う17歳の女子生徒も「駅のおばちゃんにお菓子をもらったり『撮り鉄』の方々と雪だるまをつくったり、いろいろ思い出があるから寂しいですが、バスが10往復になって観光客の人たちも変わらず来られると思うので、そこは楽しみ」と話す。

夕張市によると、JRの拠出金7億5000万円は今後の運行費補助やバスの車両購入、設備更新のほか、一部区間で運賃が鉄道の倍以上となるため激変緩和措置として発売する割引回数券の補助などに充てる。

すでにバス新車3台の購入費約1億円を補助したほか、今年度は代替バスの運行費補助に850万円を計上している。旧南清水沢駅付近にはバスが乗り入れ、交通結節点となる「拠点複合施設」を今年度中に整備するが、これは別の事業で、拠出金の対象ではないという。

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