VWが打ち出した電動化時代の「クルマの形」

バッテリーEVの販売構成を40~50%引上げへ

パリ協定を軸にしたカーボンニュートラル連合での提言実現にはBEVの普及は絶対条件だと言われている。ディース氏は「2020年に発売を開始するID.(BEV)を、現在販売しているゴルフのディーゼルエンジン搭載車と同等の価格帯である約3万ユーロ(1ユーロ124円として約370万円)ほどで販売したい」としている。

この目標価格は欧州における販売を想定したもので政府からの助成金を含んでいるが、車格の近いゴルフを引き合いに出していることからも、フォルクスワーゲンが早期にBEVであるID.を普及させたいとする決意がうかがえる。

内燃機関は存在意義を果たし続ける

一方で、2025年時点のパワートレーン構成としては75%がなんらかの形で内燃機関を搭載したハイブリッド車を含む電動車両となるわけだ。

フォルクスワーゲンの戦略部門トップを務めるミハエル・ヨースト氏(筆者撮影)

フォルクスワーゲンの戦略部門のトップであるミハエル・ヨースト氏は、「電動機構をもたない内燃機関の新規開発は、2040年の欧州において認可されないだろうと推察していますが、フォルクスワーゲンが目指している電動化は“内燃機関からの脱却”としてのシナリオではありません。この先に続く電動モビリティ社会への入り口であると考えています」と話す。

それに呼応しディース氏も「ゼロからスタートさせる内燃機関の新規開発はこの先、行いません。しかし、既存の内燃機関の排出ガスクリーン化や、技術的な上限が見えてきたとはいえ燃費数値の向上に対しては、この先も継続的に取り組んでいく」としている。つまり、既存の内燃機関(ICE)はたとえ2030年の時点であってもその存在意義を果たし続けることになる。

フォルクスワーゲンが目指す電動化への道のりは、“脱内燃機関”とするがんじがらめのシナリオではなく、BEVと、内燃機関の電動化を組み合わせて行われていく。ご存じのようにBEVに関しては充電インフラだけでなく、カーボンニュートラルの観点からは走行用の電気エネルギーの作り方、さらにはLCA(ライフサイクルアセスメント)の観点から見た車輌製造時におけるCO2フリーといった項目の実現も不可欠だ。

フォルクスワーゲンでは、BEVを含む駆動用バッテリー搭載車の充電を可能な限り風力発電や太陽光発電から行うことを目的とした子会社「Elli」(エリ)を設立し、「Volkswagen Naturstrom」(フォルクスワーゲン ナトゥアシュトローム)と名付けた再生可能な方法で発電した電力の供給をすでに行っている。

さらにこの先の話として、フォルクスワーゲンを含む数社の自動車メーカー(ダイムラー、ポルシェ、アウディ、BMW、アメリカ・フォード)で設立した「IONITY(イオニティ)」(急速充電ネットワーク)では、現存する欧州における高速道路上の約400の充電ステーションに対してグリーン電力を提供する予定だ。また、2019年末よりID.の製造を担当するツヴィッカウ工場(ドイツ・ザクセン州)でもグリーン電力を使うことが示されている。

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