結論は3年後?意見百出の上場基準見直し

早期見直し論者の清田CEOはトーンダウン

東証は有識者6人からなる「市場構造の在り方懇談会」を設置し、2018年10月から議論を進めてきたが、懇談会での議論は3月末でいったん終了。今後の議論の中心は、具体的な上場基準に落とし込むためのオープンな場(具体的な人選は検討中)に移る。清田CEOは「懇談会のメンバー個人に改めて聞くことはあるかもしれないが、懇談会に対して聞くことはないだろう」と、懇談会が自然消滅するという見通しを示した。

日本取引所の清田CEOは当初、3月末までの懇談会報告を期待していた(撮影:大澤誠)

東証は、懇談会での2回の議論を経て、2018年12月から2019年1月末にかけてパブコメを募集した。パブコメには国内外から約90件、それと並行して進めた個別ヒアリングには約70件の意見が集まった。清田CEOは当初、3月末までに懇談会から答申をもらうことを期待していたが、「パブコメやヒアリングで出た意見があまりにも多岐に渡ったために作業が遅れ」(東証幹部)、懇談会の答申としてではなく、東証が「論点整理」の形でまとめることになったのだという。

90件のパブコメのうち9件は1部上場企業から寄せられた。たけびし、TOA、北の達人コーポレーション、コタ、サガミホールディングス、日本電子材料、ペガサスミシン製造、リョーサンの8社を含む9社だ(残る1社は非公表)。

時価総額の小さい企業に漂う危機感

これら9社のうち、パブコメの締切日にあたる1月末時点の時価総額が最も大きいのはリョーサンで760億円、最小は日本電子材料で77億円。9社の内訳は時価総額250億円未満が3社、同250億円以上500億円未満が4社、同500億円以上1000億円未満が2社。時価総額の少ない1部上場企業ほど危機感を募らせてパブコメをした印象が濃い。

東証が公表した資料は集約した形での表記なので、どの会社がどんな意見を言ったかがわからない。記者の取材に対し、健康食品・化粧品中心のネット通販会社、北の達人コーポレーションは「株式市場全体の動向や投資家の期待など、発行体である上場企業自身の実力以外の外部要因によって時価総額が決まっている部分があるのも事実」「東証1部への直接上場の場合は250億円という時価総額基準があるので、市場区分の見直しではこれを最上位の市場の基準とする一方で、3年以内に時価総額が700億~800億円以上にならなければ下位市場に指定替えするという風に変えてはどうか」という意見を東証に送った。

北の達人以外では、「(4市場ある)現在の枠組みは残すべき」としたうえで、「株価指数としてのプレミアム枠を1部上場企業の中から選べば、投資家などステークホルダー(利害関係者)の期待に応えられるのではないか」と回答した会社もあった。別の会社は「業績は堅調なのに、時価総額でばっさり切られるのは勘弁してほしい」と本音を漏らす。

今年1月の会見で「いたずらに時間をかけるものではない」と早期の上場区分見直しを示唆した清田CEOだが、3月の会見では「私は『有識者の議論はいたずらに時間をかけるものではない』と言った。現行の市場構造を変えようということだから反対意見もあろうし不利益を被る方もいるかもしれない。(4月から始まる日本取引所グループの3カ年の)新中計期間中に(市場区分の見直しが)完成する確信は持てない。この期間中に出来上がるのは望ましいのかなと思うが、スケジュールありきではない」とトーンダウンした。

それだけパブコメやヒアリングでの反対や抵抗が、当初思っていたよりも大きかったということなのかもしれない。とはいえ、1部上場企業が2140社(うち外国企業2社。3月29日現在)もあり、その多くが時価総額の小さい会社であり、売買がしにくいという事態を放置し続けてよいわけでもないはず。慎重さを維持しつつも市場区分の見直しを迅速に進めなければ、世界の証券市場の中で東証の地位低下は避けられまい。

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