「日本一愛される鉄道」が直面する10年後の運命

JR東が切り離した路線を引き継いだ三陸鉄道

三陸鉄道リアス線が開通し、鵜住居駅で大漁旗を手にした人たちに迎えられる記念列車(写真:共同通信社)

観光列車に乗って窓の外に目を向けると、地元住民が手を振ってくれていたり、駅ではボランティアがゆるキャラでお出迎えしてくれたりすることがある。多くは乗客の気分を盛り上げるための自発的な行動だが、鉄道会社に頼まれて行っているという例も少なくないようだ。そういう微妙な空気は乗客の側でも伝わる。

しかし、この日の地元の歓迎ぶりは、ほかのどんな列車の沿線よりも熱気に満ちていた。2011年の東日本大震災で被災し不通になっていた三陸沿岸の宮古と釜石を結ぶ鉄路が、3月23日に運行再開したのだ。

8年を要した復旧

11時40分、釜石から宮古に向け、公募で選ばれた一般客40人を乗せた記念列車が走り出した。途中の鵜住居、大槌、陸中山田で歓迎セレモニーが行われると聞かされていたが、すべての駅で大漁旗や郷土芸能による出迎えがあった。車窓に目を向けると、年配の夫婦が住宅のベランダでうれしそうに手を振り、列車を追い掛けるように子どもたちが走っていた。

大漁旗を振って記念列車を歓迎する沿線の人々(記者撮影)

三陸といえば、岩手県などが出資する第三セクター・三陸鉄道の北リアス線(久慈―宮古間)と南リアス線(釜石―盛間)が、震災による不通を経て2014年4月に全線で運行再開された際、NHK朝ドラ「あまちゃん」効果もあって、全国から観光客が押し寄せたことが思い出される。このときの沿線の盛り上がりも大変なものだったが、今回はそれを超えていたといってもよい。

今から振り返れば、南北リアス線はわずか3年で復旧にこぎつけた。それに比べて、宮古―釜石間は復旧までに8年を要した。それだけ、被害が大きく、運行再開スキームの構築に手間取ったのだ。

被災した三陸沿岸を走る路線のうち、気仙沼線と大船渡線はJR東日本がBRT(バス高速輸送システム)として仮復旧した。JR東日本は山田線・宮古―釜石間についてもBRT導入を提案したが、同区間は路線バスも走っており、「BRTを導入する意義は乏しい」(宮古市)として、地元はあくまで鉄路による復旧にこだわった。

地元と協議を重ねた末、JR東日本はBRT導入を断念し、2014年1月に線路や施設を回復したうえで三陸鉄道に運営を移管するという提案を行った。震災から3年近くが経過していた。

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