30歳「月給17万で貯金1000万持つ」彼女の素顔 欲しいモノはお金で買えない「能力」や「愛嬌」

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人付き合いが苦手だという千尋さん。クラスメートと遊びに行っても楽しいというより「しんどい」という思いのほうが強かった。アルバイト禁止の学校だったが、春休みの短期間だけタオルの洗濯工場で働いた。時給は800円だった。障害を持っている人も働いていて、誰でもできる単純作業だったという。

「その後はフリーターをしていたのですが、どれも続かなくて。使い道がないので、フリーター時代は40万円ほど貯まりました。でも、親に『何かの学校を卒業したほうがいいのではないか』と言われ、IT系の専門学校に通い始めました。

学生時代はホテルの皿洗いのバイトをしていたのですが、夜の時間帯に4~5時間しか入っていなかったので月5万円ほどしか稼げませんでした。でも、とくに使い道もなかったし、職場の人と飲みに行っても、やっぱり仕事感があってしんどかったです」

みんなの前で「この子、もう今日で辞めるから」

IT系の学校を卒業したものの、本が好きだったので専門学校を卒業後は印刷会社に就職した。給料は手取りで月21万円。残業もあった。しかし、「仕事ができない」と自称する千尋さんは、仕事のできない自分が残業代を申請する行為に罪悪感を抱いていた。

この会社に1年ほど勤めたところで、お局さんから「あなたは仕事ができないから辞めたほうがいい。1週間猶予を与えるからそれで頑張ってみて」と言われ、自分なりに頑張ったが、1週間後、女子社員全員を集められ、みんなの前で「この子、もう今日で辞めるから」と言い放たれた。自己都合の形で実質クビとなった。

それからハローワークへ行き転職活動を始めた。人と接することが苦手なので、できるだけ接客業は避けたいと職員に告げると「まだ若いのだから、何か特技ややりたいことはないの?」と聞かれ「絵を描くことです」と答えた。そして、職員の前で絵を描いてみせた。すると、お菓子のディスプレイを作る会社を勧められ、そこを受けると無事内定をもらえた。しかし、正社員ではなく準社員で、最初のうちは時給850円。その後、900円に上がった。

手取りは月15万円ほどでボーナスもなし。家には毎月2万~3万円入れた。会社は人間関係のトラブルが起こらないよう、ウマの合わない人がいたら異動させてくれる措置もとってくれるほど柔軟な対応をしてくれたが、千尋さんは準社員のままだった。この会社は6年勤めて辞めた。

その後、千尋さんはパン工場の仕事を渡り歩く。正社員で入ったものの、働いてみるとしんどくてアルバイトに変えてもらった工場もあった。今働いているパン工場は働いてちょうど1年になる。手取りは月17万円。家に2万~3万円入れ、携帯代に1万円。そして、半年に一度、こうやって上京して趣味の裁判傍聴をするという。今回は往復2万6000円の新幹線で来たが、片道5000円ほどの安い夜行バスを使うこともある。

当初は絵描きである祖父の仕事を継ぐ予定だったが、今はもうその気はないのだろうか。

「うーん……どうすれば画家になれるのか、道筋がわからないだけなんです。能力と道筋さえわかればやると思います」

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