セブン&アイ、イオンが参入 電子マネー乱戦

既存インフラを活用し後発から先頭集団へ

 両社が自前の電子マネーにこだわるのには、来店顧客の利便性を高める狙いがある。ジャスコなどスーパーの主要顧客は主婦で、イオンクレジットサービスが抱える1400万人の会員のうち、実に7割が主婦で占められる。イオンの森本良一グループエリア戦略担当は「たとえばスイカは通勤目的の男性利用客が多い。主婦層に強い既存の電子マネーはない」と戦場の空白地帯を指摘する。自前カードを使い販促策などを展開すれば、顧客の囲い込みにもなる。 流通2強の電子マネーは、量・質ともに既存マネーを凌駕する潜在力を備えている。量の面では、事業開始から1年でナナコが1000万枚、ワオンは800万枚の発行をもくろむ。エディは今でこそ3000万枚突破が目前だが、ここまでに5年もの歳月を要しただけに、後発組の掲げる目標は一見すると高く見える。

 だが、セブンではナナコをレジで即時に発行する。流通系のクレジットカードが急速にシェアを高めたのと同じ理屈で、店頭での即時発行メリットは相当大きい。さらにセブンのオーナー向けには、発行1枚当たり100円のインセンティブを支払う抜かりない援護射撃もある。

 質の高さは電子マネーの利用件数で比べられる。現在、ユーザーによるエディの利用件数は月1600万件。スイカも首都圏交通系の電子マネー「パスモ」との相互乗り入れ効果が加わり、1日当たり53万件。 一方、セブン&アイの各店舗には1日約1000万人が来店する。その中心であるコンビニの客は現金による少額支払いがほとんどで、まさに電子マネーの決済向きだ。仮に1割のお客がナナコを使ったとしても、1日で100万件と先発組の利用実績を軽く上回る可能性がある。

 さらにナナコ、ワオンの最大の競争力は、電子マネーのコストを軽減できる既存インフラがあることだ。

 電子マネーでは少額決済を中心とするため、発行会社が加盟店から徴収する手数料を低く設定せざるをえず、料率はユーザーの購入代金の2%以下。そのうえシステムや端末投資など運営費が重い。

 高額決済を主体にするクレジットの料率は基本線で6%といわれる。それでもクレジット各社は決済だけでは利益が微々たるもので、キャッシングなどの金利収入で稼ぐ構図だ。つまり電子マネー専業の採算は厳しく、業界で先頭を走っているビットワレットも、事業開始から5期連続で赤字を出し続けている。

 セブン&アイはナナコの導入で、今期は160億円のコスト増要因となるが、もともとコンビニは情報化投資で武装する「システム産業」。セブンは昨年から500億円を投じて情報システムを更新しており、ナナコへの投資もその一環としてとらえ、吸収することができる。

 イオンではイオンクレジットのものを一部活用してシステム構築を行い、初期投資の軽減を図った。イオンクレジットには特定日の買い物に割引特典があるが、カードの提示だけで割引をするため、会員の3分の1程度は支払いを現金で済ませるというデータがある。まずはこうした客層を電子マネーで拾い上げていく。森本氏は「5年も赤字が続く事業にゴーサインは出ない」と採算面に自信を見せる。

 電子マネーの利便性向上には、グループ外でも加盟店を増やすことが欠かせない。しかし、電子マネー林立を眺めて「支払う手数料は1%、いや0・5%でないと厳しいね」(大手コンビニ首脳)と、導入を検討する企業からは慎重な言葉も飛び出す。

 陣取り合戦で手数料のダンピングが進行すれば、最後は体力勝負になる。それだけに、流通2強が持つ店舗やシステムインフラなどのバックボーンは有力な武器だ。ガリバーの参入で電子マネー市場の拡大は間違いない。それは同時に、競争のさらなる激化するを意味する。

(書き手:並木厚憲 撮影:尾形文繁)

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