アジアで対立する3人の指導者の因縁 日中韓のリーダーを突き動かすもの

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ナショナリスト的言動は国民に向けてのアピール

現在の中国のリーダーである習近平国家主席の立場は3人中最も複雑だ。彼の父親(習仲勲)は共産革命のトップ指導者のうちの一人だった。日本との戦いでゲリラを率いていた習仲勲は、蒋介石が中国内戦でナショナリストを破るのを支援した後、中央委員会の一員となり、党中央宣伝部長、国務院副総理兼秘書長、広東省知事を歴任した。

習仲勲の共産主義者としてのキャリアは申し分ないので、習近平は父の野心を継承する必要がないように見えるが、そのナショナリズムにも歴史はある。

毛沢東の目標は自国内で革命を統合することであり、ささいな島々に関する領土紛争には乗り気でなかった。英国に香港を返還させる主張すら気にしていなかった。反日感情が慎重にかき立てられたのはトウ小平が資本主義国に門戸を開放してからのことだ。マルクス主義や毛沢東思想は、中国が資本主義社会に参加することを正当化できなかったが、旧式のナショナリズムがこれに取って代わった。中国経済がリーダーシップを取るようになるほど、特に日本に対する怒りをかき立てることになった。

トウの門戸開放政策で一番の責任を負ったのは習仲勲だ。現実的な共産主義者であり続けた習仲勲は何度も毛の粛清対象となり、当時は反革命主義者として頻繁に非難された。習近平はこの現実的な考えを継承し、世界中とビジネスを行おうとしているように見える。そのためにトウの改革派と同様に日本に抵抗し、東アジアで中国の支配を主張することで、ナショナリストとしての信任を築かなくてはならない。

習も安倍も朴も現実に戦争は望んでいない。言動の多くは国内に向けてのものだ。この危険な瀬戸際政策を行えるのは、米国が警官としての存在感を保っているからだ。今でこそ彼らは無責任に行動することができるが、米軍が撤退すればこの流れも変わるかもしれない。そうなれば、3国は互いに独力で折り合いをつけていかなければならない。

が、それは米国、日本、韓国そしておそらく中国の人々にさえ危険だと映るだろう。結果的に現状を打破できないことになるが、それは国家主義者が領有権主張において行うスタンドプレーがまったく終わっていないことを意味するのである。

2013年12月28日-2014年1月4日新春合併特大号

(c)Project Syndicate

イアン・ブルマ 米バード大学教授、ジャーナリスト

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Ian Buruma

1951年オランダ生まれ。1970~1975年にライデン大学で中国文学を、1975~1977年に日本大学芸術学部で日本映画を学ぶ。2003年より米バード大学教授。著書は『反西洋思想』(新潮新書)、『近代日本の誕生』(クロノス選書)など多数。

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