「株価は大きく下落する」と読むこれだけの理由 実態は悪化しているのに市場は見て見ぬふり

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1月の貿易統計を合わせてみると、輸出金額が前年比8.4%も減少し、2カ月連続の前年比マイナスを記録したが(輸出数量は3カ月連続のマイナス)、大きく足を引っ張ったのは、アジア向けの半導体製造装置(前年比34.0%減)であった。中国をはじめとするアジア経済の悪化(特に設備投資や建設投資の不振)が、日本の投資財の販売に打撃を与え、加えて生産全般を圧迫したと推察される(投資財の生産は、鉱工業生産全体のほぼ4分の1を占める)。

3月14日から15日に開催された日銀の金融政策決定会合では、輸出と生産についての見通しが下方修正されたが、これは前出のような景気一致指数や輸出統計の内容と符合する。

本当にすでに日本の景気は後退期に入ったのか?

冒頭では景気一致指数について、「筆者にとってかなり意外感があった経済指標」だったと述べた。内閣府の基調判断の下方修正もあって、「日本経済はすでに昨年10月で山を付け、後退に向かっている」との論が力を得ている。もしそうした「昨年10月ピーク説」が正しければ、現在の景気拡大は2012年11月の景気の谷から始まっているので、71カ月の拡大期間で終わったことになる。戦後の景気回復の最長記録は73カ月(2002年1月~2008年2月)なので、1月の閣議後の茂木敏充経済再生担当相による「景気回復期間が戦後最長になったとみられる」との表明は、誤りだったことになる。

まあ、73カ月の記録を抜くか抜かないかは、誤差の範囲なので特に気にすることもなかろうが、景気一致指数の3カ月連続の悪化は、解説したように、1月のアジア向け(特に中国向け)の投資財などの輸出減によるところが大きい。

ただ、1月に輸出が下振れしたのは、中国の春節休暇の日程の影響だとの指摘が聞かれる(それが本当かどうか、筆者にはわからないが)し、日本の正月三が日が土日と重ならず、日本の輸出品生産工場の操業が落ちた点もあるかもしれない。2月の日本の貿易統計は、この原稿が東洋経済オンラインで公開された直後の、3月18日(月)午前8時50分に発表予定で、輸出額が1月の反動で戻る可能性もある。また筆者はすでに日本経済が後退期に入ってしまったというのは、少し早すぎるようにも感じられる。

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