一流大の不正入学事件で露呈したアメリカの闇 富裕層でないと一流大学に進学しにくい
富裕層に有利に働くのは、寄付金だけではない。大学によっては、卒業生の子息であるという事実が、入学の際に有利に働く場合がある。一流大学を出て成功した暁には、同じ大学に進む足がかりを子息に与えられるわけである。
ハーバード大学では、学生の14%が卒業生を保護者に持つという。2009~2015年を平均すると、同大学に卒業生の子息が合格する割合は30%を超えており、それ以外の出願者の約6%を大きく上回る。2018年の調査によれば、私立大学の42%、公立大学でも6%が、保護者が卒業生であるかを合否判断の材料としている。
富裕層の子息が多い大学に有利な判定方法
教育や受験の準備にかける費用についても、富裕層の子息は恵まれた環境にある。受験に必要な論文の執筆指導など、お金をかければ利用できるサービスは無数に存在する。今回の不正の舞台となったスポーツ推薦枠も、たとえ正当に利用しようとした場合ですら、そのためのトレーニングなどの面では、金銭的に余裕のある家庭が有利になりやすい。
大学側にも、富裕層の子息を集めようとする力学が働く。保護者による寄付金などを通じた財政面での恩恵が期待できるのみならず、大学の評判にも関わるからだ。アメリカで大学の評判といえば、『USニューズ&ワールド・リポート』誌が毎年発表するランキングが有名である。アメリカの政治専門サイトの「ポリティコ」によれば、同誌によるランキングには、富裕層の子息が多い大学に有利な判定方法が使われているという。
例えば、同誌がランキングで重視するSATやACTといった標準テストの成績は、家庭の所得との相関関係が強く、実際の学力を測るには、高校の成績に劣るといわれる。また、やはりランキングの判定基準である財政余力や職員の給与水準等は、学費や寄付金の集金力に直結する。裕福な家庭の学生が多いほど、大学が使える資金が増え、ランキングの上昇が期待しやすくなるわけだ。
アメリカの大学の競争は厳しい。上位ランクの確保は、死活問題である。2015年のアメリカでは、全体の約2割にすぎない倍率2倍以上の大学に、出願者の4割弱が集まった。『USニューズ&ワールド・リポート』誌のランキングにおける上位50校では、2029年までに出願者が14%増加すると見込まれる一方で、地元の学生が多い地方の4年制大学への出願者は、同じ期間に1割以上減少するという。
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