「種の絶滅もたらす人類の無知と無関心」 コロンビア大学地球研究所所長 ジェフリー・サックス

金銭的補償と法的規制で種の絶滅は避けられる

 このような自然破壊的な活動は、コストが非常に高いにもかかわらず、実は効果が低いので、破壊活動を止めさせるのは難しくない。

 まず底引き網漁は違法にすべきである。漁業者が他の活動に移行する間に行う補償は、それほど大きな金額にはならないはずだ。また、熱帯雨林の破壊は経済的なインセンティブと法的な規制を組み合わせることで、おそらく阻止できるだろう。

 さらに保護海域を指定し、その地域での漁業や船の乗り入れや掘削など、破壊的な行為を禁止すべきである。そうすれば当該地域は種の再生だけでなく、周辺の非保護区域にまで生態的な恩恵が及ぼされよう。

 牧草地開拓を制限するだけでは効果はない。なぜなら次々と新たな牧草地を開拓しなくては生活できない貧しい農家は、規制をものともせず、開拓への強い誘惑に駆られているからだ。したがって規制よりも金銭的なインセンティブを与えることで、森林保全の効果が発揮できるだろう。

 多くの熱帯雨林国は、熱帯雨林保全基金を設立して、森林が伐採されないように貧しい農家に金銭的な支援を行うよう先進国に提案している。仕組みの整った基金なら、熱帯雨林の破壊を遅らせ、生物の多様性を保全し、森林の燃焼による二酸化炭素の発生を減らすことができるはずだ。同時に農家は安定した収入を得て、そのおカネを子供の教育や医療に振り向けることができる。

 現在、気候変動に関して行っている調査と同じように、種の生存・絶滅状況に関する科学的調査も行い、その情報を定期的に世界に提供する必要がある。政治家は科学者個人の意見に耳を傾けようとしないが、何百人という科学者が一致団結して声を上げれば、耳を傾けざるをえなくなるに違いない。

 最後に、気候変動を阻止するために、2010年までに各国政府は新しい国際的な枠組みを構築するための交渉を行うべきである。

 気候変動も種の生存に対する最大の脅威の一つである。地球の温度が上昇し、降雨や嵐の発生するパターンが劇的に変われば、多くの種が生存を維持するために不可欠な地域が消えてしまう。一部の種は他の場所に移りすむことができるだろうが、他の種(たとえば北極グマなど)は、私たちが地球温暖化を阻止するために断固たる行動をとらないかぎり、絶滅に追い込まれる。

 こうした対策は即座に実行可能である。資金的にも余力はある。一刻も早く、そうした対策をとって地球サミットにおける国際公約を実行しなくてはならない。

 無意識のうちに人類は何百もの他の種を絶滅に追いやっており、それが、さらに人類の将来さえも危機にさらしているかもしれないという事実を受け入れるのは、あまりにもつらすぎる。

(C)Project Syndicate

ジェフリー・サックス
1954年生まれ。80年ハーバード大学博士号取得後、83年に同大学経済学部教授に就任。現在はコロンビア大学地球研究所所長。国際開発の第一人者であり、途上国政府や国際機関のアドバイザーを務める。『貧困の終焉』など著書多数。

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