「データ苦手な人」には経営者になる資格がない これから「生産性向上」には逆風が吹き始める
この研究は、生産性の向上の中身を分析しています。生産性は3つの要素に分解することができます。
1つは人的資本です。これは人間の数、働く日数、時間の投入などで計算することができます。
2つ目は物的資本です。簡単に言うと、設備投資、機械などへの投資です。1人の社員に対して、どのくらいの資本を設備投資などに使っているかを指します。
3つ目は全要素生産性です。全要素生産性は、人間と機械の使い方だけでは説明がつかない要素のことで、簡単に言うと生産性を計算して先の2つの要素を引いた残りです。
全要素生産性は説明が難しいのですが、技術、ブランド、デザイン、工夫、教育などだと捉えてください。工夫とは、人と資本の組み合わせを変えたり、ビジネスモデルをいじったり、ビッグデータを使ったりすることを意味しています。
同期間のG7のGDP成長率は2.1%でした。そのうち、人的資本によるものが0.5%、物的資本によるものが0.9%でした。
2.1%の生産性向上の中で人的資本と物的資本では説明がつかない0.8%が、全要素生産性による生産性の向上で、全体の4割弱を占めます。
日本も、人的資本では他国に負けているわけではありません。とくに労働市場への参加率を高めてきたことによって、生産年齢人口が減っても、労働人口は増えています。G7の平均成長率0.5%に比べ、日本は0.4%です。物的資本の増加率もG7平均の0.9%に比べ、あまり変わらない0.8%です。
ではなぜ、日本の生産性が先進国最低になってしまったのか。その原因は全要素生産性にあります。G7平均の0.8%に比べて、日本はたった0.2%で、G7の中で最下位です。
日本で全要素生産性が伸びない2つの原因
日本で全要素生産性が伸びない原因は2つ考えられます。
1つ目は、環境の問題です。同じIMFの研究では、高齢化の影響があるのではないかという仮説を示しています。
生産年齢人口に対する高齢者人口の比率と、全要素生産性の向上率との間に、強い相関関係が見られるようになりつつあると指摘しています(ただし、データがそろっておらず、まだ十分な検証はできていないので、あくまでも仮説だとされています)。
私は、この説はかなり的を射ているように感じます。高齢になればなるほど、若い頃のように工夫ができなくなるのは、どの国でも共通している傾向です。以前の記事でも指摘したように、高齢者はデフレを好み、若い人はインフレを好む傾向があるという分析結果とも合致しています。また年齢が高くなればなるほど保守的になり、若い人のように変化を好まなくなるものです。
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