日経平均株価の「上値の壁」はいくらなのか アメリカの株価に追随する形でまだ上昇?

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テクニカル面では、需給好転のシグナルが点灯している。短期線が中期線を上抜くゴールデンクロスとなって、もう一段戻りを強める展開が想定される。戻り余地としては、長期投資家の損益分岐点といわれる200日線や下げ幅に対する3分の2戻し水準のある2万2000~2万2500円前後も期待できそうだ。

ただ、一方で、そろそろ利益確定売りの備えも必要かもしれない。まずは2019年3月8日、株価指数先物・オプション3月物の特別清算指数(いわゆるメジャーSQ)の算出を迎える。メジャーSQにからんで相場が大きく動くことがままあるが、現在は裁定取引に伴う現物株の買い残高が低水準にとどまっているため、SQで相場が急変する可能性は低そうだ。

2万2500円突破は容易ではない?

とはいえ、2018年以降の価格帯別売買代金をみると、2万2500円前後がボリュームゾーンになっている。この価格帯では150兆円近くの売買代金が積み上がっているなかで、足元の東証1部売買代金は1日当たり2兆円前半にとどまる。売っていた海外投資家の買い戻し等が途切れれば、このボリュームゾーンの壁でいったん上げ一服となることも予想すべきだ。

また、実は、前述のゴールデンクロスには落とし穴がある。そもそも一定期間での終値から算出する移動平均線は、実際の株価動向に遅れる。さらに、その移動平均線同士の交差は実際の株価動向により遅れる。すなわち、ゴールデンクロスは需給好転の上げシグナルであるものの、買いのタイミングとしては、決して有効的といえない。いったんは押し目の局面を待つ慎重な姿勢も大切だろう。

なお、筆者はもし日経平均が調整しても下げ幅は限定的とみている。当面の下値めどは、25日線と75日線の交点となる2万1100円前後か。もしこのところ例年訪れるアメリカ株の春ラリーを見込むならば、日本株の押し目買いの好機になるだろう。

最後に、今後の日経平均における重要な節目をあげる(3月5日時点)
2万4270円 2018年10月高値
2万2565円 3分の2戻し(高値2万4270円→安値1万9155円に対し)
2万2043円 200日線(長期線)
2万1726円 直近値(2019年3月5日終値)
2万1713円 半値戻し(高値2万4270円→安値1万9155円に対し)
2万1139円 25日線(短期線)
2万1115円 75日線(中期線)
2万0860円 3分の1戻し(高値2万4270円→安値1万9155円に対し)
2万0617円 2018年3月安値(米中貿易戦争懸念)
2万0014円 2018年末値
1万9155円 2018年12月安値(原油急落)

中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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