アームはモバイル端末以外にも拡がっていく 営業戦略責任者が語るARMアーキテクチャの未来

拡大
縮小

――さまざまなモノがネットにつながると、共通プラットフォームとしてアームの普及が広がるということですか。

その通りだ。たとえば企業がマイクロプロセッサを開発する場合、もっとも重要なのは開発費を抑えること。ゼロから開発すると合理的に進まないことが必ず出てくるが、その部分に関してはアームのリソースや経験、ノウハウを使うことで負担を減らすことができる。パートナー企業はそれ以外の部分に投資することで、さらに付加価値を乗せた設計開発が行える。共通基盤の部分を私たちが提供することで、アドバンテージを感じていただけれると考えている。

――パートナー企業としては、どのような業界が増えてきていますか。

半導体メーカーに限らず、モバイル分野なら通信業者とも話をするし、テレビ局や住宅メーカー、セットトップボックスのメーカーも含まれる。今やハリウッドスタジオのようなところでコンテンツプロバイダとなっている業者とも、どういうテクノロジーがほしいかを話し合っている。日本に関してもビジネスのやり方は基本的に同じで、トヨタ自動車やデンソーなどともコミュニケーションをとっている。

日本が強い影響力を持っている分野は多い

――日本の半導体業界は縮小が続いている。どう位置づけていますか。

ここ数年間を見ると、日本市場が課題を抱えているのは確か。でもセンサや車載など強みを持っている分野もあり、その他の産業界でも日本市場が強い影響力を持つ分野がある。日本のことについては内海(弦・日本法人社長)さんに説明してもらいましょう。

内海:日本の自動車メーカーは、アーム技術の入った半導体を欲するようになっている。一方で日本の半導体メーカーの中には、他社との差別化が難しくなるから、いやいや顧客の要望に応えてアームを使うといった声も聞かれる。

システム全体で見ると、アームは必要な技術と認識されるようになってきている。資産の継承性やスケーラビリティにおいて安価にできるという点も認識されている。一方では、外国製のアームに乗り移ることで、国産から外国産のプロセッサに移るととらえる方がいらっしゃる。外資は嫌だという業界は、まだ自動車業界以外でたくさんある。アームの技術で一部の研究開発費を肩代わりするという考え方を、他の業界にも理解した上で使ってもらうことが重要なことだと考えている。理解が進めば、自動車以外の業界でもアームの採用は増えるだろう。

最近は日本の半導体技術者が、自動車など最終製品のメーカーに移っているのは動かしがたい事実。最終製品メーカーが半導体技術者を欲する一方で、半導体業界がリストラしたことで需給のバランスが成り立ってしまった。その結果、日本で何が起きているかというと、最終製品メーカーがより半導体ベンダーに近い能力を持つ最大の好機が訪れている。私どもの半導体技術をより生かした形で、システムとしてのアームを理解して使ってもらうチャンスが生まれつつある。今後は日本で、よりよい半導体が生まれる可能性が出てきている。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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