次期エース候補をそろえておくことで、マネジメントはいつでも、たとえ絶対的エースであっても背中を押して送り出す心構えができる。これは、エースがまだ組織にいるうちから意識的に進める必要がある。いちばん身近なロールモデルから教えを受け、背中を見ることは何よりの育成機会だ。また、逆説的ではあるが、そういった次期エースが豊富な組織はいいサイクルに乗っていて活気にあふれ、離職率もぐっと低いものである。
人事戦略を「経営」と捉える
チームレベルではなく、人事戦略が「経営ごと」として捉えられていれば、採用や配属のミスマッチが引き起こす離職は必ず防ぐことができる。弊社は日頃からさまざまな業界の組織改革プロジェクト、場合によっては人材育成の研修までを手がけているが、事業・組織戦略と人事戦略の整合性が取れていないパターンは非常に多い。
たとえこれら戦略の整合性が取れていたとしても、やっとスタート地点に立てたにすぎない。中長期的な視点で、採用—配置—育成—評価ができて、初めていいサイクルが回り始めるのだ。そのためには人事部任せの採用、研修ではなく、事業部側と強力にタッグを組んだ戦略的人事の展開が必須である。これこそが悲しい人材流出を防ぐ基盤である。
「よい退職」は「悪い退職」とは真逆の好循環を生み出す。例えば「あの会社でこんな経験ができた」とポジティブなクチコミが広がる効果。退職者の経験談には大きな波及効果があるが、優秀な人材が「私はあの会社出身」と明るく語ってくれることにはさらに意味がある。「あこがれの〇〇さんが育った環境ならば」と、次世代の優秀人材が入社してくれることも期待できるからだ。
また、退職者と良好な関係が続いていれば「未来のステークホルダー」になってくれることも期待できる。つながりのなかで転職先企業が顧客や仕入先になったり、協業したりする可能性もあるだろう。しかし、これが「悪い退職」であった場合にはその機会が失われてしまう。
辞めていったメンバーの顔を思い浮かべてみれば、「よい退職」か「悪い退職」かを見極める大きな判断材料になるかもしれない。また、自身が「悪い退職」を経験したことがあるのであれば、負のスパイラルはここで打ち止めにして、自ら「よい退職」を推進できる組織づくりにつなげていただければ幸いだ。
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