この会話の質の測り方は非常に難しいところではあるが、1つバロメーターとしてお勧めしたいのは「仕事以外のトピックで部下について知っていることがあるか」である。会社であれば、業務および社内でのキャリアについては当然話すだろう。また、優秀な人材であれば、高い評価をしている旨はフィードバックしているだろう。
プラスアルファとして個人的な志向、例えば、最近読んだ本、プライベートの過ごし方、人生に影響を与えたエピソードなどについて知っているだろうか。その中には人の本質を捉えるためのヒントがちりばめられている。
お互いに開示する
当然、人間にはさまざまなタイプがある。人の役に立つ仕事をしたい人、自身の信念に沿った仕事に携わりたい人、現場で職人として技術を極めたい人、マネージメントポジションに就きたい人など。
質の高い会話から発せられる個人個人の「やりがい」を捉えられず、今携わっている業務でしかつながっていない関係は、ミスマッチが起きたときに突然の「悪い退職」が発生するのだ。少しで構わないのでお互いを開示できていると心理的に安全で、質の高いコミュニケーションを取ることができる。たとえミスマッチが起きても、早い段階で方向修正が可能になるので「悪い退職」を防ぐことができるのだ。
気持ちよく送り出せる「よい退職」をしてもらうにはどうすればいいか。終身雇用が終焉を迎えた今の時代、「退職は発生するものだ」という考え方自体はだいぶ浸透してきた。もう退職そのものは防ぐことができないイベントだと認識し、「よい退職」をしてもらう方向に舵を切るべきである。「よい退職」であれば、組織にも個人にもまったくネガティブな影響はなく、むしろすばらしい看板となってくれることのほうが多い。
最近、弊社で採用した社員はその典型だ。彼女の口から前職のネガティブな話を一切聞いたことがない。すばらしい仲間と上司に恵まれていたようで、いかによい会社だったかを語ってくれる。そんなすばらしい組織を抜けてまで転職してくれたことは光栄に思うと同時に、さらによい環境を提供していかなければと身が引き締まる。
では、「よい退職」を実現するためにはどうすべきか。まず「悪い退職」を減らすのはもちろんのこと、優秀な人材をいつでも送り出せるだけの、組織としての準備と心構えをしておくことが重要だ。具体的には次の3つのポイントを重点的に押さえると良いだろう。
優秀な人材だからといつまでも自分の手元に囲っておくのではなく、どこに出しても恥ずかしくないプロフェッショナルを育成することを心がけてほしい。場合によっては、マネジメント側から部署移動や次のステージを勧める覚悟がほしい。そのためには次のポイントが組織に実装されている必要がある。
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