――鹿毛さんはデータをあまり重視しない?
いえ、そんなことはありません。クリエーティブばかりのイメージをもたれていますが、僕自身、MBAを取っていて、嫌というほど数値分析の重要性はたたき込まれてきました。それでも、データ分析こそマーケティングという風潮はおかしいと思います。最近は、何でも機械的にデータを処理し、それをビッグデータと言って満足している感じがします。ビッグデータ自体は否定しませんが、それだけではアウトプットは出せません。
そういえば、ミゲルとさくらまやちゃんのCMをリリースする前、ヤフーの方とパネルディスカッションをする機会がありました。その中で、ヤフーに蓄積されている膨大なテキストデータを分析し、「エステーの新作CMでミゲルの相手役を務めるのは誰か?」を当てる企画がありました。データがはじき出した候補の中に、さくらまやちゃんが出てきたときは「あっ!」と驚きました。でも、最終的に機械が行き着いた答えはジャスティン・ビーバー(笑)。ミゲルとビーバーは顔が似ているから、情報が一致したのでしょう。しかし、ビーバーでは当たり前すぎて、今回のような話題性は生まれなかったでしょう。結局、データでいい線まで行ったとしても、たどり着けない到達点があるんだなと実感しましたね。
人の頭の中に広がる宇宙
――データよりも大切なものがあると。
そもそも、人間の脳以上に自由で豊かな世界はないと思っています。脳はまだまだ解明されてないことが多いし、それこそ宇宙のようなもの。自分が生きてきて、いろいろなことを感じたり経験したことが、頭の中で結び付いて思いもよらない発想につながる。
実はエステーのCMの曲は僕が作詞しています。これには学生時代にバンドを組んでいて作詞作曲をしていた経験が生きています。さらにミゲルをプロデュースするにあたって、声変わりが生かせる曲を作ってもらったり、大人な雰囲気に切り替えるための英国系の洋服を仕立ててもらったり、それぞれのプロフェッショナルを集めました。こうしてそれぞれのクリエーターの感性の宇宙をつなげると、ものすごい銀河系が広がって行きます。
このつながりはクリエーティブの世界にとどまりません。サイエンス思考の左脳人間とだって同じように融合できます。お互いの異なる個性や経験をつなげて、すごいところを認め合うことが大事です。これからもそうしたいろいろな人の頭の中を融合させながら、魅惑の銀河系を作り続けていきたいと考えています。
(撮影:風間 仁一郎)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら