――ミゲルくんに代表されるように、CMの切り口が他社と違うと感じます。
そもそもCMは見られないものだ、という大前提があります。世間にどのくらいの数のCMが流れていると思いますか? なんと1カ月当たり約4000本ものCMが流れているのです。エステーの場合、商品の競合会社はP&Gや白元などですが、CMの単位で考えると、この4000本と戦っていかなければなりません。エステーの広告予算は30億円ほどで、日本企業の中で200位にも入らない予算規模です。そんな会社がトヨタ自動車やリクルートといった、予算が数百億円もあるような会社とライバルになるわけです。そこで生き残るためには、魅力的なクリエーティブが必要になると考えています。
「あれもこれも」では、結局誰にも響かない
――魅力的なクリエーティブはどんなプロセスで生まれてくるのでしょう?
クリエーティブをつくるにあたっては、大きく2つの段階があります。まずは「何を伝えるか」。そして、具体的にそれを「どう表現するか」という段階です。
「何を伝えるか」の段階では、論理的なデータ思考が重要です。商品の名前や特長、コンセプト、それによってどのような商品のイメージを作り上げたいのかを考え、順位づけをしていきます。なぜこの作業が重要かというと、「あれもこれも言いたい」と詰め込みすぎて、メッセージが重くなってしまいがちだからです。これでは誰にも届けることができない。とにかく、言いたいことを絞り「伝えたいこと」の本質に迫っていきます。
次に「どう表現するか」という段階です。伝えるべきことが整理できても、それだけでは素通りされてしまう。相手がドキッとするような演出を考えて、相手の“表情を変える”ことをしなければなりません。
たとえば、婚活パーティで、男性からいきなり「私は東大出身の34歳で年収1000万円、結婚願望アリです、よろしく」などと自信満々に声をかけられたら、女性はどう思うでしょうか。普通、引いちゃうでしょ。相手にとってどれだけ魅力的な条件だったとしても、事実を言うだけではだめ。伝え方をうまくやらなければ、メッセージは響かないのです。
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