「消臭力」がそれでもミゲルを使うワケ 異色のエステー宣伝トップが語る、究極のクリエーティブ哲学

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CM初出演が2011年(写真上)。わずか2年間のうちに少年からイケメンへ大変身し注目を集めたミゲルくん(写真下)。

――ミゲルくんに代表されるように、CMの切り口が他社と違うと感じます。

そもそもCMは見られないものだ、という大前提があります。世間にどのくらいの数のCMが流れていると思いますか? なんと1カ月当たり約4000本ものCMが流れているのです。エステーの場合、商品の競合会社はP&Gや白元などですが、CMの単位で考えると、この4000本と戦っていかなければなりません。エステーの広告予算は30億円ほどで、日本企業の中で200位にも入らない予算規模です。そんな会社がトヨタ自動車やリクルートといった、予算が数百億円もあるような会社とライバルになるわけです。そこで生き残るためには、魅力的なクリエーティブが必要になると考えています。 

「あれもこれも」では、結局誰にも響かない

――魅力的なクリエーティブはどんなプロセスで生まれてくるのでしょう? 

クリエーティブをつくるにあたっては、大きく2つの段階があります。まずは「何を伝えるか」。そして、具体的にそれを「どう表現するか」という段階です。

「何を伝えるか」の段階では、論理的なデータ思考が重要です。商品の名前や特長、コンセプト、それによってどのような商品のイメージを作り上げたいのかを考え、順位づけをしていきます。なぜこの作業が重要かというと、「あれもこれも言いたい」と詰め込みすぎて、メッセージが重くなってしまいがちだからです。これでは誰にも届けることができない。とにかく、言いたいことを絞り「伝えたいこと」の本質に迫っていきます。

次に「どう表現するか」という段階です。伝えるべきことが整理できても、それだけでは素通りされてしまう。相手がドキッとするような演出を考えて、相手の“表情を変える”ことをしなければなりません。

たとえば、婚活パーティで、男性からいきなり「私は東大出身の34歳で年収1000万円、結婚願望アリです、よろしく」などと自信満々に声をかけられたら、女性はどう思うでしょうか。普通、引いちゃうでしょ。相手にとってどれだけ魅力的な条件だったとしても、事実を言うだけではだめ。伝え方をうまくやらなければ、メッセージは響かないのです。

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