年収500万円でもOK、「2拠点生活」の実現法 発想と工夫で「二重の住宅費」は克服できる

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ただ、それでも、引っ越し代などを加味すると、都会の物件売却の利益で賄えない。福島さんは「待とう」と決めた。「都心に遠く、すぐに住める物件ではない。この条件では買い手がつきにくく、いずれ値が下がると考えた」(福島さん)。

狙いどおり、その後、売主から条件交渉の連絡が入り、さらに100万円値引きした500万円での購入を実現。引っ越し代などを自宅売却による利益で賄うことができた。

いすみ市の別荘は350坪の広大な敷地に建つ。福島さんは平日は都内の賃貸物件で生活する一方、週末になると家族を連れ、古民家に通い、家具など生活用品を自作している。「いすみ市で仕事を見つけようとしても、思ったような仕事はなかなか見つけにくい」。そう語る福島さんにとって、現在のデュアルライフの満足度は高いという。「2拠点で生活して思うのは、東京暮らしのよさも田舎暮らしのよさも、それぞれを経験することで両方を実感できる」(福島さん)。

通勤圏外の物件にこそ価値あり

福島さんの2拠点生活を振り返ると、その実現には3つのこだわりがあった。1つ目は「低コスト」。「東京で5000万円以上の住宅を買い、住宅ローンに縛られていたら、おそらく2拠点目を購入することはできなかった」(福島さん)。1拠点目の住宅費の支出を抑え、マンション購入額と売却額との差額で儲ける不動産投資家としてのしたたかな戦略が2拠点生活を可能にした。

DIYで家具や風呂を製作。とくにDIYの経験はなかったが、「今の時代、ネットで調べたら簡単にできる」と福島さんは語る(写真提供:福島新次氏)

2つ目は「発想の転換」だ。いすみ市の自宅は、東京都心からは電車で2時間以上かかり、通勤圏には入らない。「だからこそ多くの人にとっては価値のない物件となり、値段がぐっと下がる」(福島さん)。田舎暮らし好きの福島さんにとっては、週末通うことはできるが、毎日通うには遠すぎるくらいの距離の物件のほうが魅力的だった。「お金をかけずにDIYで家具を作るのも楽しい。発想を変えればいい」(福島さん)。

3つ目が「目的」である。前述したように福島さんの田舎暮らしの原点は、高校時代の川遊び。その後、徐々に汚れていく川を目にして、「水をきれいにする文化をつくりたい」と思うようになった。今はいすみ市で生活の基盤を整えながら、将来的には自分の思いを形にするよう活動を広げていこうと考えている。「目的があるからこそ、資金繰りや物件探しも根気強く続けることができた」(福島さん)。

デュアルライフは、別荘で趣味を満喫したり、地域貢献の活動をしたり、将来の移住に備えて別の仕事をしたりと、形態はさまざまだ。その実現には、「二重の住宅費」というコストが不可欠。だが、発想や工夫次第でそのハードルはクリアできる。福島さんの実践は、そのことを如実に教えてくれる。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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