悪ふざけバイトへの法的措置は妥当な策なのか

くら寿司など相次ぐ「不適切動画」顰蹙の代償

なるほど、確かにアルバイトの数が増えていけばこうした不祥事が発生する可能性は上がるかもしれない。時給も高いよりは安いほうがその確率は上がるだろう。その意味で、こうした原因(安い賃金による不正規雇用の増大)と結果(不適切動画を投稿すること)とは、まったく無関係とはいえない。

しかし、企業の側でそれを通常予見することはない。ほとんどのアルバイトはまじめに勤務しており、不祥事を起こすことはない。つまり、両者の間に相当因果関係はないのであって、これらの事情をもって不適切動画事件の原因とすることには、違和感を覚える。

その意味において、一連の不適切動画事件と、非正規雇用や格差問題を結びつけて論じるのは、論理が飛躍しており、やや早計にすぎるだろう。アルバイトによる不適切動画事件と、雇用や格差の問題は切り分けて論じられるべきものだ。

従業員の不適切行為に企業はどのように備えるべきか

なぜこうした不祥事が増えているのかについては、こうした論点よりも、発信しやすい環境が整備されていることのほうがはるかに大きいだろう。インターネットとスマートフォンが普及し、Twitterやインスタグラム、TikTokといったSNSが広く使われるようになったことによって、誰もが手軽に発信できるようになった。

一方で、あまりの手軽さから、思慮もなしに、自分の身の回りの知人に発信しているつもりで、実際には広く公衆の目に触れ、そこから問題に発展する事案があまりに多い。そしてこうした動画が2次的、3次的に一気に拡散することも、SNSがあって初めて可能となる。つまり、これまでも同様の悪ふざけが行われていたのだが、ここまで拡散されることがなかったという可能性が高い。

もっとも、企業側に顧みる点がないといっているわけではない。企業の側でも、SNSにおけるポリシーを定めたうえで従業員管理を徹底する必要があり、また、こうした不適切動画の投稿の多くが学生アルバイトによってなされていることからすれば、正社員がアルバイトの監督を適切に行うことが求められるであろう。

結果的に、人件費は多くかかってしまうだろうが、コンプライアンス上の必要経費として考えれば決して高くはない。たった一人の従業員の不適切行為によって、企業はその価値を大きく毀損することがあり、一度発生した損害の回復が容易ではないことが多く、時と場合によっては経営危機にまで発展することも十分ありうるからだ。

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