日経平均2万1000円回復でも全く消えない懸念 市場は連銀にも米中交渉にも期待しすぎだ

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このように、アメリカ経済が悪化の方向へと、着実に歩み始めたにもかかわらず、同国の株価や米ドル相場は、余りにも楽観的な動きに見える。前述の小売売上高が発表された先週木曜日は、さすがにアメリカの株価指数は下押しし、米ドル円相場は1ドル=111円超から一時は110円台前半に入ったが、そうした調整は軽微であったと言える。さらに先週末金曜日にかけては、米株価指数も米ドル相場もやや持ち直しを見せている。

市場は連銀にも米中交渉にも「期待しすぎ」

先週の動きだけではなく、このところアメリカの株価が概ね戻り歩調を持続している背景には、さまざまな期待が働いていると推察される。たとえば連銀の金融政策については、1月以降、「もう利上げはないし、量的緩和の縮小も早晩停止されるだろう」といった期待が広がっているように見受けられる。

しかし連銀筋からは、「利上げは様子見、すなわちしばらく行なわないかもしれないが、次の政策金利の変化は上方向(つまり利上げ)であるし、一部で囁かれているような、バランスシートの金額の「床」(下限)を設定するかのような期待も、明らかに行き過ぎ」という声を聞く。この点で、市場の期待は行き過ぎている。

米中交渉の進展期待も、アメリカの株価を押し上げていると言われる。これまで当コラムで述べたように、昨年12月の株価下落に恐れをなしたドナルド・トランプ大統領は、中身があろうとなかろうと構わないから、中国との間で適当なところで手を打とうとしていた。

しかしそれでは、中国が肝心の知的所有権侵害や技術移転の強要といった問題で何らの譲歩策も打ち出さないままになると、トランプ政権内の対中強硬派は苦虫をかみつぶしていた。ついには強硬派が我慢ならず、巻き返しに出て、大統領に「安易に妥協するな」と圧力をかけたためか、大統領も一時は「2000億ドル分の対中輸入に対する、3月1日の関税の引き上げ期限までに、米中首脳会談はない」と発言するに至った。

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