JR3社&東急、「北海道」観光列車戦略の全舞台裏 運行会社の公募ではなく「車両レンタル」案に
現在も運行しているこれらの列車は、JR九州の観光列車のように車内に乗客を驚かせるような豪華な装飾があるわけでないが、むしろ北海道の雄大な車窓を楽しむなら、内装が主張しすぎる必要はないともいえる。
JR北海道が観光列車戦略を縮小する状況下で、道は観光列車の導入で地域に観光客を呼び込み、鉄路を守るという方針を打ち出した。豪華観光列車が道内を周遊する「北海道版ななつ星」の運行も視野に入る中で、2016年8月に検討会議がスタートした。
当時のJR北海道は道の方針に応える余裕はなかった。「観光列車だけで収益を上げることは難しい。当社にはほかに優先すべきことがたくさんある」――。JR北海道の島田修社長は2017年1月に行った取材でこう発言している。
その後、道の検討会議は多額の投資が必要となる豪華列車の新造はあきらめ、中古車両を改造して週末などに短い区間を運行するのが現実的という姿勢に転じた。
これに呼応するかのように、JR北海道もトーンを緩めた。西野史尚副社長(現・JR東日本副社長)は「未来永劫、観光列車を造らないと言っているわけではない」と語っている。
石破氏「航空会社が鉄道を運行したらどうか」
「ほかの事業者がJR北海道の線路を使って商売するというやり方もあるはずだ」。暮れも押し迫った2017年12月22日、鉄道通で知られる石破茂衆議院議員は、本誌インタビューの取材の際に、こんなアイデアを披露した。
石破氏は、ドイツのルフトハンザ航空が列車を運行していたのを引き合いに出し、JALやANAがJR北海道の線路を借り受けて新千歳空港から道内各地に向かう特急列車を走らせてはどうかと提案した。かつて、JR北海道はANAとタイアップして、ANAのツアー客向けに「ANAビッグスニーカートレイン」を走らせたことがあるが、もしJALやANAが「鉄道会社」になったら、従来の鉄道会社とはまったく違うサービスを提供する列車を走らせるかもしれない。
国土交通省内では道内における観光列車戦略の拡充について継続的に協議が続けられてきた。そして2018年2月、国交省は政府の観光戦略に関する会議で「JR北海道の線路を開放して、意欲のある外部事業者を国内外から広く公募し、魅力ある多様な観光列車を運行させる仕組みを検討する」と発表した。詳細なスキームを固めて、秋には事業者を公募する計画だった。
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