JR3社&東急、「北海道」観光列車戦略の全舞台裏

運行会社の公募ではなく「車両レンタル」案に


東急電鉄の髙橋社長は「観光列車を走らせるのは北海道全体の観光事業を創始する大きなファクターになる」と語った(2018年8月6日、撮影:大澤誠)

JR北海道は自社の線路の上にJR貨物の列車を走らせることで線路使用料を得ているが、同じスキームでほかの旅客鉄道会社に線路を貸し出す。日本では鉄道会社が運行に専念し、線路などのインフラ管理は他社に委ねている「上下分離」の例は珍しくないが、線路を開放して複数の事業者が旅客輸送を行うというのは欧州の「オープンアクセス」的な発想である。

英国では同じ線路の上を複数の旅客鉄道会社の列車が走り、鉄道会社同士がある意味競合関係にあるが、今回のスキームではJR北海道に足りない部分を外部の鉄道会社が補う。JR北海道にとっては線路を貸し出すことで線路使用料が得られるので悪い話ではない。JR北海道にとっても異論はなく、国交省のスキームに賛同した。

さっそく関心を持ったのが東急だ。同社は北海道でもバス、ホテル、流通など幅広く事業を行っており、新千歳空港など道内のうち7空港の運営権取得にも意欲を燃やす。

東急の髙橋和夫社長は、「“上”に観光列車を走らせるのは北海道全体の観光事業を創始する大きなファクターになる。当然、興味ある話になってくる」と昨年8月の取材時に意気込みを語っていた。ただ、この段階では詳細なスキームが決まっていないため、東急としてもザ ロイヤル エクスプレスを持ち込むのか、新たに車両を製造するかも含め、どのような形で列車を走らせるか、具体的な検討は行なっていなかった。

運行はJR北海道が行う形に

事態が急転したのが9月6日だ。北海道胆振東部地震が発生したのだ。北海道における観光客減少が懸念され、観光列車による観光活性化が急務となった。JR北海道の島田社長はJR東日本に相談。びゅうコースター風っこを借り受けることができた。JR北海道にも同タイプの車両があり、メンテナンスがしやすいため、JR北海道としても好都合だった。

続いて、島田社長は東急のザ ロイヤル エクスプレスに白羽の矢を立てた。「車内クルーのサービスが魅力的に映った。北海道には数多くの温泉旅館があるので、寝台列車である必要はない」(島田社長)。

JR北海道を交えた3社の話し合いで決まったスキームは、JR東日本と東急が車両を貸し出し、JR北海道が運行するというものだった。外部の事業者が自ら運行するという当初の想定とは異なっていた。

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