伊藤忠vsデサント、断絶を招いた根本原因 デサントは「世論を味方に」しか打つ手なし

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7月4日、伊藤忠がデサント株を買い増し始めた。伊藤忠のデサントへの出資比率は2011年から25.7%で横ばいだったが、7月4日以降、伊藤忠はデサント株を順次買い増した。

すると8月末、デサントがワコールとの包括的業務提携を発表した。デサントの取締役には伊藤忠出身者が2人いるが、彼らへの事前説明がないまま取締役会に緊急動議として付議され、決まったという。

その後、岡藤会長CEOと石本社長の会談内容が漏洩し、週刊文春11月1日号に「伊藤忠のドン岡藤会長のデサント“恫喝テープ”」として掲載された。ことここに及んで、両者の関係は修復不可能なまでに悪化した。

デサントはTOBに「反対」を表明

伊藤忠の説明によれば、11月中旬ごろ、デサントの石本社長からMBO(経営陣が参加する買収)による株式非公開化を検討しているとの連絡を受けた。これに関わっているファンドは伊藤忠に対し、デサントは多額の借り入れをして市中の株式を買い取り、非上場化すると説明した。伊藤忠はデサントの財務体質が不安定になるとして、株式非公開化に反対し、「現経営陣の保身を優先し、社員を軽視している可能性がある」と指摘した。

そして今年1月31日、伊藤忠はデサント株のTOBに踏み切った。

これに対しデサントは2月7日、TOBに対して「反対」の意見を表明し、伊藤忠側の言い分に真っ向から異を唱えた。

「株式非公開化は、初期的に検討されたものにすぎず、負債の金額その他具体的な取引条件等の検討に至っておりません」「従業員との間の良好な関係を極めて重要視しており、現に良好な関係を構築してまいりました」「伊藤忠商事らの主張は、事実に反するとともに、極めて誤導的なものであり、非常に恣意的かつ悪意に満ちた内容でさえあると当社は考えています」と、反対表明のリリースに記している。

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