国会質問は出来レース?「進次郎神話」の限界 切り込み隊長役に浮上する「小泉厚労相」説

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質問の前半に、持論の国会改革に絡めて首相の拘束時間の長さなどを指摘した小泉氏は、質疑終了後に記者団に囲まれると「国民の声は『国会を変えろ』だ。画期的な議論ができた」と胸を張ったが、野党側は「露骨な首相へのすり寄り」(立憲民主幹部)と冷笑した。

小泉氏の一連の質疑について辻元氏は「ガス抜き質問でガッカリした。『進次郎神話』の限界を見た」と指摘し、「このままだと単なる人気者で終わってしまう」と批判した。4日午後から5日にかけての主要野党の質問に比べると、「小泉氏の質問は党の部会長という立場からは突っ込み不足で、1強政権への配慮が目立った」(細田派幹部)ため、「結果的に、野党攻撃の弾よけとはならなかった」との見方も広がった。

一方、今回の小泉質問について、大手紙やNHKを始めとするテレビ各局はそれぞれの視点で報道はしたが、これまでのような「特別扱い」は目立たず、翌日の民放テレビ各局の情報番組でもほとんど取り上げられなかった。

浮上する「小泉厚労相」説

もちろん、統計不正をめぐる国会攻防はこれからが本番だ。野党側は週内にも始まる2019年度予算案の質疑を通じて、根本厚労相の罷免を強く求める方針だ。毎月勤労統計だけでなく政府の基幹統計調査に多くの不正が発覚している。与党内にも「政権が追い詰められれば、最終的には厚労相の辞任は避けられないのでは」(閣僚経験者)との不安も広がる。自民党内ではすでに、根本氏の後任についても複数の厚労相経験者の名前が取り沙汰されているが、「いずれも在任時に不正が続いていただけに適任とは言いにくい」のも事実だ。

そこで一部に浮上しているのが小泉氏の厚労相起用説。厚労部会長として活躍する小泉氏を後任に起用すれば「野党側も、人気者の小泉氏なら攻撃しにくいし、国民も応援する」との思惑からだ。「小泉氏が父親張りに『厚労省をぶっ壊す』と叫んで就任すれば、国民は拍手喝さいする」(自民若手)との声もささやかれる。

参院選に強い危機感を持つ首相や与党幹部にとって、小泉厚労相で統計不正での野党攻撃に歯止めをかけられれば「メリットは大きい」(閣僚経験者)。さらに、参院選での「最強の応援弁士」(自民選対)としての期待も広がるからだ。ただ、「政界は嫉妬の海」とされるだけに、自民党内で小泉氏の特別扱いへの反発が広がり、厚労相起用が政治家・小泉氏の「挫折」につながる可能性も少なくない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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