コーヒー券を完売、新幹線パーサーの販売術

育児と仕事の両立で「乗務する母」の先駆者に

「朝はやっぱりコーヒーが1番売れます。夜になるとビールやチューハイ、ハイボール。昔はウイスキーのミニボトルみたいなものもよく売れましたが、最近は手軽な缶飲料が人気です」

というのは、あくまでも“基本パターン”。実際何がよく売れるかはそれこそ乗ってみないとわからない。団体客が多ければ、朝からでもアルコールを手にして宴会が始まることも少なくないし、逆に修学旅行生がいたらアイスやお菓子がメインの販売アイテムになる。

「最近は外国人のお客さまも増えていて、和菓子とか抹茶アイスをお勧めするとすごく喜んでもらえます。外国のお客さまも日本人の団体のお客さまも、乗り慣れているビジネスマンのお客さまも、一人ひとり違います。それぞれに合わせた対応をしなければいけません」

こう聞くだけでもなかなか奥が深そうなのだが、さらに興味深いのはワゴンの構成。扱っている商品はだいたい60~70品目ほどあるという。乗車時には一通りの商品が積まれた状態でワゴンも車両に載せる。

だが、ここからがパーサーたちの腕の見せどころ。売れるもの・売りたいものに積み替えてアレンジをする。この成否によって、売れ行きが大きく左右されることもあるようだ。特に近年ではデパ地下やコンビニ、駅ナカといった強力なライバルの存在もあるから、このアレンジは特に重要になってくるのだろう。

コーヒーチケット完売も

矢野さんは販売業務の実績もピカイチだ。例えば、コーヒーチケットの販売。コーヒー1杯と交換できるチケットが5枚つづりで1350円。ホットコーヒーなら1杯50円、アイスコーヒーなら60円お得になるというものだ。このチケットの販売は矢野さんの得意のするところ。

5枚つづりになったコーヒーチケット。1乗務で10冊を売り切ることも(撮影:尾形文繁)

「私がしていることは簡単で、コーヒーくださいと言われたら『こちらのチケットをお持ちですか?』と毎回お声がけをするだけ。持っていないと言われたら『これからも東海道新幹線をご利用ですか? それでしたら……』と」

そばにいたジェイアール東海パッセンジャーズの広報担当者は「それが大変なんですよ。断られ続けるとどうしても心が折れて、お勧めするのが怖くなってしまいますから。1列車に10冊のコーヒーチケットを用意していますが、まったく売れないことも珍しくありません」と説明する。

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