コーヒー券を完売、新幹線パーサーの販売術

育児と仕事の両立で「乗務する母」の先駆者に

東海道新幹線に乗務するチーフパーサー矢野涼子さんは子育てをしながら仕事を続けてきた(撮影:尾形文繁)

新幹線にはよく乗るが、車内で決まって買うのがコーヒーである。車内販売のワゴンがやってきたら、なんとなく声をかけてコーヒーを買う。そんな新幹線利用者は多いのではないかと思う。

だが、忘れてはいけない。何げなく買う新幹線のコーヒー、それを売るパーサーの皆さんを。

どんなお客相手にも笑顔を絶やさず、テキパキと注文をこなして窓際の遠くのお客からのアイコンタクトにも機敏に反応。通路の向こうから歩いてくるお客がいればワゴンを巧みに脇に寄せて歩くスペースを確保する……。

新幹線の車内では、すっかり当たり前の光景になっているパーサーたちのワゴン販売。でも、そこにはきっと“ならでは”のテクニックが潜んでいるに違いない。

パーサーの仕事とは?

チーフパーサーを務めるジェイアール東海パッセンジャーズの矢野涼子さんが話してくれた。1999年入社のベテランにして、東海道新幹線のパーサーの中でも指折りの販売の達人だ。

「パーサーの仕事は大きく分けて2つあります。車掌業務と販売業務。車掌業務は昨年3月から異常時対応が新たに加わった仕事で、車内を巡回して異常がないかどうかを確認したり、お困りのお客さまに声がけをしたりしています」

車掌業務を担当するときにはもちろんワゴンは押さず、車内を歩きながら乗客の様子や不審物のチェックなどに目を光らせる。安全運行のカギを握る重要な仕事だ。このところ、新幹線の車内でのトラブルや事件もしばしば報道されており、そうした事案を予防する役割も持っているのだろう。

さて、気になるのは「販売業務」。どのような体制で行われているのだろうか。

「例えばA車ワゴン、B車ワゴンというのがあります。11号車を拠点にして、A車は自由席のある1号車方面に向かい、B車は反対へという具合に。先に帰ってきたほうがグリーン車を通って、どこかで落ち合ったらまた戻っていく。できるだけ同じタイミングですべてのお客さまに行き渡るように販売しています」

こう聞くとB車ワゴンのほうが担当両数が少なく楽なようにも思えるが、実際には乗車率や団体客の有無にも忙しさは左右され、どちらか一方が大変ということもないようだ。

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