三菱商事と資本提携したイオンに問われる効果
資本業務提携を発表したイオンと三菱商事。三菱商事は、8月下旬から368億円を投じてイオン株を取得。すでに発行済み株式の約4・6%を買い付け、筆頭株主となっていたが、今後さらに約5%まで買い進める方針だ。
両社はこれまでも、共同で商品調達を行っていたほか、今年9月にも三菱商事がイオンの物流子会社に出資するなど、部分的には協力関係にあった。だが「いまいち決め手を欠いていた」(イオン・岡田元也社長)。今回の提携は、これまでの関係からもう一段踏み込み、物流、素材原料の調達の効率化に加え、金融やIT、マーケティング事業に至るまで、幅広く取り組むのが狙いという。
消費低迷や他店との競合激化などにより、イオンの業績は急激に悪化している。2008年2月期は総合スーパーの不振で10期ぶりの減益。08年8月中間期も3期ぶりの最終赤字で着地した。10月以降も、値下げなどの販促策を立て続けに打ち出したが、客足は鈍く成果はいま一つ。期初に打ち出した総合スーパー不振店の閉鎖も進捗は思わしくない。09年2月期通期も減益着地が懸念される中、収益改善は喫緊の課題。イオンとしては、今回の提携をバネに、経営の効率化を一層加速させたい構えだ。
だが、市場の目は厳しい。積極的なM&Aなどグループ規模の拡大により、08年8月末の有利子負債残高は1兆1309億円にまで膨らんでいる。子会社買収や新規出店で資産が増加する一方でその回収は計画どおりに進んでおらず、自己資本比率は20%台にとどまる。
株価も年初の1567円から一貫して下落、現在はほぼ半値の水準にある。同業のセブン&アイ・ホールディングスの株価が年初から約10%前後の落ち込みで踏みとどまっているのとは対照的だ。格付投資情報センターは11月、イオンの格付けの方向性を「A+安定的」から「ネガティブ」へ引き下げた。「このまま利益、キャッシュフローの低水準が続けば格付けへの下押し圧力はさらに高まるだろう」(同センターの山本由明チーフアナリスト)。
今後、今回の提携効果をどこまで具体的に示すことができるか。これまでの協働の延長線レベルでは市場は納得しない。
(鈴木良英 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら