韓国サムスンも陥った「偽ブランド」の巧妙な罠 世界では悪質な商標取得や粗悪コピーが横行

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提携したのは1994年に本家アメリカで設立された「Supreme」とは異なるイギリスのパクリ企業「Supreme Italia」なのであるが、このパクリ企業はイタリアやアジアでは商標権の訴訟で本家に勝った逆転現象で、地域によってはこちらが堂々と商品を販売してきたのである。

「Supreme」は若者に人気の世界的なストリートブランドで、他ブランドとのコラボが有名。ナイキやリーバイス、ルイ・ヴィトンなどとロゴを並べての商品が期間限定で発売され、中には数十万円のプレミア価格が着いた古着もある。今回のコラボはそこにサムスンが加わったというニュースになるはずだったが、発表直後に本家アメリカの「Supreme」が提携を否定し、サムスン電子は大恥をかいてしまった。

雑然と売られていたスマートフォンケースには、「Supreme」のロゴが印刷された(筆者撮影)

ややこしいのは、中国で「Supreme」の商標を取得していたのは、そのパクリ企業ではなく、これまた別の中国法人ということだった。さすがにサムスン側は「コラボは本社とは別に行われたもの」と苦しい弁明をしながら提携中止を発表するしかなかったが、中国・上海に飛んでみると、そもそも現地では安い偽コラボ商品がゴロゴロと売られていた。

パクリ商品であふれる上海のショッピングモール

上海市内、ロレックスやコーチなど高級ブランドの公式ショップが並ぶデパートには見当たらずとも、一般庶民が買い物をするショッピングモールにあるスマホ関連グッズを売るショップでは、労せずして「Supreme」ロゴの入ったスマホカバーや充電器などを見つけた。サムスンの機器用のものの中には、「SAMSUNG」のロゴが印刷されているものもあったが、両企業の商標に許可を取ったものではない。

無法地帯の衣類。「クレームが来たことは1度もない」と店側は言うが…(筆者撮影)

上海では以前から、粗悪な材質の「Supreme」ブランド衣類がたくさん並べられている。本物であれば6000~8000円の値札を付けるようなトレーナーが、そこではわずか1000円程度。Tシャツに至っては400円の商品もあった。中には店頭に「Supreme」のロゴを看板に入れて、まるで公式ショップのように見せている店もあるが、「撮影禁止」の看板を付け、店側のやましさを感じさせている。その店員に話を聞くと「このあたりで出回っているSupreme商品に本物などない」とあっさり言いきっていた。

「ナイキやアディダス、アンダーアーマーなんかも同じ。でも、本物を作っている工場から流れてきた横流し品とか、その工場にあった中古機械を手に入れて作った模造品もあるから、本物と変わらないものもあるよ。買う人は本物かどうかなんて気にしないから、クレームが来たことは1度もないけどね」

この店で売られていたのは、一目でわかる粗悪コピー品ばかりで、アメリカの「Supreme」シャツは中米の自社工場で製造されたアメリカンコットンによる素材が多いが、こちらはペラペラの薄い生地で、中には「Supreme」シャツなのに、タグが「NIKE」になっているマヌケなものまであった。

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