整備新幹線、今の活用法では宝の持ち腐れだ さらなる高速化や貨物輸送などの検討が必要
これは、全幹法第7条「整備計画」において、全幹法施行令第3条に基づき最高設計速度が定められていることが根本にある。すなわち、同法に基づいて整備計画が決められたのは各線とも1973年。山陽新幹線の岡山・博多間が建設中の時代で、設計最高速度は東海道が時速250km、山陽新幹線では時速260kmで、営業上の最高速度は時速210kmであった。将来的に時速50km分の余裕を持たせておけば十分と考えられていたためだ。逆に、それ以上の速度は技術的に困難と考えられていた。
しかし、全幹法制定後に整備計画が決定された東北新幹線の盛岡以南において、時速320kmまで速度を向上させていることから、最高速度を「整備計画で定めているため」だけでは説明不足である。すなわち整備新幹線がその後、公共事業方式となり、上下分離方式で作られたことによる関係性に真の理由がある。
現在の建設・保有主体である鉄道・運輸機構は時速260kmの規格に基づいて設計し、建設する。その規格は国の審議会を経て決定された。運営事業者たるJRは線路を借りて使用料を支払って運営しており、自身の所有ではない施設、設備の規格を勝手に変更することはできない。俗に言えば“大家”と“店子”の関係がある。
最高速度引き上げを決めるのは誰か
では、JRが営業施策として速度向上を図ろうと企図した場合、まずはどこと協議をすればよいか。
少なくとも鉄道・運輸機構は決定権を持ち合わせていない。では、国の判断を仰ぐとしても、改めて環境アセスや審議会を持つ段階までさかのぼらなければならないのか、設備改良の費用はどこが負担するか、さらには収益が上がれば「受益の範囲内」として設定された貸付料の見直しも必要になるのか。これらもろもろが現在に至るまで整理されていないのである。また、その整理すべき項目は多岐にわたり膨大であるがゆえに誰も踏み込まなかった、というのが真相である。
最高時速260kmは、世界の高速鉄道の趨勢においてもあまりに時代遅れとの指摘がある。首都圏と北陸の間の場合は、航空と対比しても距離やアクセス条件等から新幹線が260kmであっても競争力を持つ。このため最高速度問題に挑まずとも好成績を出している。しかし、東京・札幌間等の長距離区間を見渡す場合、建設の効果すらそがれる懸念がある。その点は国も有識者も共通に認識している点であり、関係機関への要請は多々寄せられているようである。