アメリカが沸く「平均年齢20歳バンド」の凄み

ロック界期待の星、グレタ・ヴァン・フリート

デトロイト郊外で育ったキスカ兄弟の父親はブルースミュージシャンで、彼らは幼い頃から父親が好きだったB.B.キングやジミ・ヘンドリックスなどを聴き、さまざまな楽器に触れて育ったという(ちなみに、ローリング・ストーン誌によると、ボーカルのジョシュは高校生になるまでツェッペリンの存在を知らなかった)。彼らがクラシック・ロックを志したのはある意味自然の流れだった。

グレタ・ヴァン・フリートが猛スピードでスターダムを駆け上がっているのには、彼らの音楽的才能以外の理由もある。WSJによると、彼らのプロモーションには、アデルやフーファイターズなどを手掛けたことで知られる、芸能事務所WMEの音楽部門トップ、マーク・ガイガー氏と、ケイティ・ペリーなどのデビューにかかわったラヴァ・レコーズ幹部のケンドリック・ラマー氏など、アメリカの音楽業界ではかなりのビッグネームが関わってきた。

デカい会場では公演しないワケ

こうしたすご腕プロモーターが関わったことで、2017年に200回もの公演を行い、大ブレイクを果たす。この年には、テレビCMでも使われた「ハイウェイ・チューン」など2曲をリリースし、これらはいずれもアップル・ミュージックやスポティファイなど、ストリーミングサービスで大々的に取り上げられた。

そして、2018年になると、全米で公演のチケットが売り切れるようになった。トム・ハンクスやジャスティン・ビーバーなど著名人と「セルフィー」を撮り、それがSNSなどで拡散されることでさらに有名になっていく。2019年には世界ツアーも始まり、日本、オーストラリア、ヨーロッパを回る(すでにオーストラリアやヨーロッパの一部公演は完売)。

とはいえ、マネジメント側は、グレタ・ヴァン・フリートを大きなコンサート会場で公演させることはしておらず、いずれも3000人規模の会場にとどめている。WSJによると、この規模の会場であれば、多くの人がグレタ・ヴァン・フリートを近くで見られた、という興奮的感覚を得られるとしている。

猛烈な勢いでメジャーになっていく、グレタ・ヴァン・フリートだが、改善の余地があるとすれば、それはジョシュのボーカルだ。グレタ・ヴァン・フリートの曲の多くに荒々しい箇所が見受けられ、時折たじろいでしまう。彼のように生まれつき才能に恵まれている場合、しばしば訓練をしないことで声帯を傷つけてしまう可能性があり、荒々しさはその前兆かもしれない。訓練を受けないまま、このペースで公演を続けることには懸念を感じる。ジョシュの感動的ともいえるボーカル的才能は、彼らの未来のファンのためにも残しておかなければならない。

そしてもう1つ、音楽業界はグレタ・ヴァン・フリートを単なる「ロック復活」のための道具にするべきではない。往年のロックファンが“あのバンド”と比較しすぎて、彼らに無駄なプレッシャーをかける必要もないだろう。彼ら自身も、自分たちはロック復活のためや、ロックの新たな道を切り開くために演奏しているのではない、と話している。この熱狂、そして彼らの奏でる音楽に対するファンの熱狂こそが、ロックンロールそのものなのである。

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