「洋子さんは話をしていても話題が豊富だし、頭の回転も早い。そうかといって自分ができることを鼻にかけたりしない。結婚したらお互いを尊重しあって生活できるパートナーになると思うんです。ただ彼女、39歳でしょう? 妊娠するには、ギリギリの年齢。結婚したらすぐに子どもを作らないと手遅れになる。その前に、妊娠可能な体かどうかブライダルチェックを受けてほしいのだけれど、自分からなかなか言い出しづらくて。相談所を通じて言ってもらえませんか」
私も、早坂の仲人も2人で深いタメ息をついた。そして、早坂の仲人が続けた。
「私、言ったの。『あなただって46歳なんだから、妊娠するかしないかは女性ばかりの問題ではない。責任は男性と半々ですよ』って。そうしたら、『あ、僕は結婚する前にブライダルチェックを受けます』と言うのね」
これだから、アラフォー、アラフィフの結婚は難しいのだ。
2人がもしも20代だったら、親はまだ現役で働いている。親の介護は20年、30年先の話で、“介護をどうしようか”というところにまで考えが及ばないだろう。
ブライダルチェックにしても、ひとまず結婚をして数年経っても子どもができなかったときに、“お互いに検査をしてみようか”という話になるのではないか。
それがアラフォーの結婚となると、高齢の親の介護が気になるし、妊娠できる時間に限りがあるので、まだ結婚を決める前から、近い将来に起こりうる問題をあれこれと心配してしまう。
実家の近くに戸建てを建てたい
新年の面談から10日経った頃、洋子から、「やっぱり早坂さんとは、交際終了にしてください」というメールが入った。真剣交際をこちらが勧めるくらいうまくいっていたはずなのに、いったい何があったのだろうか。
その夜、電話で洋子と話をした。
「早坂さん、今は都内で一人暮らしですが、結婚をしたら実家の近くに一戸建ての家を建てたいとおっしゃるんですよ。ご実家は新宿まで通勤特急に乗っても1時間半くらいかかる場所。私は東京で生まれて東京で育ちましたから、そんな不便な所には住みたくない。しかも、そこの地域は車を足代わりに使わないと生活ができない。私、免許を持っていないし。
今の会社への通勤時間を考えると1時間半はギリギリ通えなくはないけれど、年々体力は落ちていくのだし、子どもが生まれたら仕事を続けていくのは難しくなりそうだから」
私は、洋子に言った。
「でもね、“あれも難しい”“これも嫌だ”と頭で考えてバツばかりつけていたら、誰とも結婚できないわよ。実際に生活が動き出してみないとわからないこともたくさんあるのだし」
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