英EU離脱・原発凍結で日立「鉄道」はどうなる? 欧州2強統合に破談観測、市場環境は大激変
ニュートンエイクリフ工場は日立の英国における製造拠点だが、メンテナンスを行う拠点は英国各地に点在する。現在は7カ所にあり、2020年までに13カ所まで拡大して、工場と合わせ2000人を雇用する計画だ。
メンテナンス拠点の一つ、ドンカスター基地(サウス・ヨークシャー州)では、IEPのうちロンドンとエジンバラを結ぶイーストコースト本線を走る車両の保守を行う。基地内では、ニュートンエイクリフ工場でほぼ真っ白な外観を呈していたクラス800の車両に営業仕様のカラーリングを施す作業が行われていた。
日立は2016年、当時同路線の列車を運行していたヴァージントレインズ社にクラス800を納入した。この列車には日本語で「東」を意味する「あずま」という愛称が付けられ、ヴァージングループの総帥、リチャード・ブランソン氏がひらがなで「あずま」と書かれた車両を前に満面の笑顔を浮かべる様子は世界中で報道された。
その後、同社は経営不振により同路線から撤退。政府系のLNER社が運営を引き継いだが、日立から引き続きクラス800の供給を受け、愛称も引き続き「あずま」だ。ひらがなの文字は消えたが、ボンネットや側面にはアルファベットで「AZUMA」と書かれている。ドンカスター基地は車両を新デザインへ衣替えする作業の真っ最中というわけだ。
あずまは本来であれば昨年中に営業運転を始める予定だったが、LNER側の事情で延期となっている。間もなく営業運転する予定といい、本格稼働すれば基地もメンテナンス作業で大忙しとなるだろう。
EU離脱の影響に懸念
今や英国経済にしっかりと根付いた日立の鉄道ビジネスにとって、EU離脱問題は頭の痛い問題の一つだ。2016年に英国でEU離脱の是非を問う国民投票が行われた際、日立の鉄道部門を率いるアリステア・ドーマー執行役専務は、「よもや離脱派が過半数を取ることはあるまい」と踏んでいた。しかし、現状は強硬離脱もあり得るという最悪のシナリオで進んでいる。
合意なき離脱によって関税が復活し、税関検査が復活すれば、車両製造への影響は小さくない。クラス800に使われる部品の7割は工場から40マイル(64km)以内にあるメーカーから調達しており、物流面での心配はないという。ただ、現地化比率が相当のレベルまで高まっているとはいえ、部品メーカー側にサプライチェーンの混乱が生じて、日立への納入が滞る可能性は捨てきれない。
また、強硬離脱によって今後、欧州大陸向けの車両案件を獲得した場合には同工場での製造に支障が出るかもしれない。もっとも、2015年に日立が買収したイタリアの鉄道メーカーの車両工場が、予想以上に生産レベルを改善している。その場合、今後の欧州大陸での展開にとってイタリアの工場が重要な役割を果たす可能性はある。
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