英EU離脱・原発凍結で日立「鉄道」はどうなる? 欧州2強統合に破談観測、市場環境は大激変

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ニュートンエイクリフ工場で製造中の近郊車両(記者撮影)

同工場では、IEPのほかにスコットランドで鉄道運行を行うアベリオ・スコットレール社向けの近郊用車両も製造している。これらを合わせた毎月の生産量は約40両。1週間に1編成のペースで完成車両を送り出していることになる。

工場に足を踏み入れると、日本国内にある鉄道車両メーカーの工場よりもレイアウトがすっきりしていることに気づく。「この2種類の車両だけを造るための最適なレイアウトにしています。将来別の車両を製造する際は、レイアウトを組み替えます」。日立レール・ヨーロッパの交野剛史シニア・マネジャーが教えてくれた。

日本ではどのメーカーの工場もJRや私鉄のさまざまな種類の車両を同時並行で造っており、先週まで特急車両を製造していたスペースで翌週から通勤列車を造るということがしょっちゅう起きる。日本の工場はフレキシブルさが求められるゆえに雑多な感じがするのかもしれない。

一方、ニュートンエイクリフ工場では2種類の車両をひたすら造り続ける。自動車工場とまではいかないが、日本国内の鉄道工場と比べれば、間違いなく大量生産である。「でも、まだまだ手作業による部分が大きい。いかにモジュール化できるかが今後の課題です」と交野氏は言う。こうした技術開発に伴う部分は、今後も笠戸工場が担当することになる。

また、IEP向けクラス800車両の製造工程のすべてが英国で行われているわけではない。量産先行車両は笠戸工場で製造され、さらに量産車両においても熟練技を要する鋼体の溶接作業は日本で行われる。

しかし、英国でも熟練技を身につけた従業員が増えれば、いずれ100%現地生産になる可能性もあるだろう。工場では700人あまりの従業員が作業に従事しているが、その多くは鉄道車両製造は未経験。しかし、同じ車両をひたすら造り続けることで習熟のペースは早い。当初25人いた日本からの駐在員も現在は6人まで減った。

「案件候補はいくつもある」

製造中のクラス800。現在、ニュートンエイクリフ工場は2車種のみ製造している(記者撮影)

順調なスタートを切った工場の課題は稼働率の維持だろう。近郊車両の製造は今年春に完了し、IEP向けクラス800の製造も2020年には完了する。

だが「次の候補案件はいくつもある」として日立側に心配する様子はない。数多い候補の中でもとりわけ受注したい案件は、ロンドンとバーミンガムを結ぶ高速新線計画「ハイスピード2(HS2)」の車両である。総事業費は27億5000万ポンド(約3800億円)で、54編成を製造する。

日立はボンバルディアと組んで入札に参加。対抗馬としてアルストム、シーメンス、さらにスペインのタルゴ、CAFといったメーカーも名を連ねる。最高時速360kmで走る車両の製造先が決まるのは今年後半とみられる。

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