東急「田園都市」にも忍び寄る高齢化の危機

新移動手段やコミュニティー形成進めるが…

2018年9月に行われた「洗足・大岡山・田園調布まちづくり100年シンポジウム」で行われた「郊外住宅地の明日」と題するパネルディスカッション内では、埼玉県の鳩山ニュータウンでコミュニティーづくりに取り組む建築家藤村龍至氏が「海外で行われている最新のまちづくりの事例を聞いても、アートのように多様な人々をつなぐ存在は重要」と語る一方、次のような疑問を呈する場面もあった。

「郊外住宅地の明日」シンポジウムの様子(筆者撮影)

「多摩田園都市でアーティストを集めて人々をつなぐ人たちを増やそうとしても、こうした層が入っていけるのかが課題だ。地価が高すぎて、おそらくアートをやるような人や若い世代は田園都市線沿線には住めない。すると企業に勤めている人が中心となるという20世紀型のモデルになってしまうという課題があると思う」

多摩田園都市でのコミュニティー形成の課題は1960年代から指摘されており、その解決のために地域のお祭りを企画したり、レクリエーション施設を建設したりすることは従来行われてきた。しかし、いまだに地域住民によるまちづくりの課題は解決しないまま、さらに高齢化・人口減少時代への対応という発想の転換を行わなければならない場面にさしかかっている。

多摩田園都市のような郊外住宅地の多くは、地域の担い手が都心部へ通勤することを前提として住宅地が形成されている。こうした街では住民同士が顔を合わせる機会が創出されづらく、人々の交流が生まれにくい。

また、多摩田園都市のブランド化自体もある意味で閉鎖性を生む要素をはらんでおり、内部のコミュニティーが活性化しても、外部への開放性を持たないように見える。新住民が増えなければ地域の新陳代謝は起こらないが、そういったコミュニティーに他地域の人が魅力を感じ、住民としてその中に入っていこうと感じるかは疑問が残る。

明確な将来像を示せるか

多摩田園都市は、すでに形としては出来上がった街だ。そこでコミュニティーづくりを行い、新しい街の姿を導入するのは並大抵のことではない。そもそも何のためにコミュニティーを生み出そうとしているのか、その先にはどんな暮らしがあるのか。住民が新しいまちづくりを望んでいるのか、それすらもぼんやりとした状況であることは先に挙げたアンケート結果などから透けて見える。

「郊外型MaaS」や「WISE CITY」は、現状では漠然とした近未来の姿の提示にとどまっている。持続可能な多摩田園都市を創造するのであれば、より具体的な取り組みや、これまでの延長線上にはない大胆な施策も必要になるだろう。東急はその覚悟をはたして見せることができるか、今後の施策で問われていくことになる。

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