東急「田園都市」にも忍び寄る高齢化の危機

新移動手段やコミュニティー形成進めるが…

そこで東急電鉄は2012年に横浜市との間で「次世代郊外まちづくり」の推進に関する包括協定を結んだ。若い世代の減少や高齢化、コミュニティーの希薄化に対し暮らしやコミュニティーを重視した「次世代郊外まちづくり」を進めようとしている。

歩道と車道を分離した美しが丘の街並み(筆者撮影)

その際にモデル地区に選定されたのがたまプラーザ駅北口地区(美しが丘1丁目、2丁目、3丁目)だ。これは昔の「元石川第一地区」の土地整理事業が行われた、多摩田園都市の「顔」といえる地区だ。ここからまた新しいモデルをつくろうという姿勢には、東急と横浜市の強い想いがうかがえる。

2012年からは東急と横浜市の包括協定に基づき、産学公民共同でアンケート調査やまちづくりワークショップが行われている。そして2013年には「次世代郊外まちづくり基本構想」が策定された。ここでは「良好な住環境とコミュニティの持続と再生が実現した郊外住宅地の将来像」を「WISE CITY(ワイズシティ)」と名付けた。WISEはWellnessやIntelligence、SmartやEcologyなどといった英単語の頭文字を取った造語で、最先端技術を使って多世代が暮らす、賢く持続可能な街を目指そうといった意味だ。

「WISE Living Lab(ワイズ リビングラボ)」の外観(筆者撮影)

その中で打ち出された取り組み姿勢の1つが、歩いて暮らせるスケールの生活圏を想定し、その中に買い物・医療・子育て・コミュニティー活動を集約する「コミュニティ・リビング・モデル」だ。この取り組みの第1弾として、2017年には先述の「CO-NIWAたまプラーザ」から300mほど離れた場所に、モデルホームとオープンスペース、コミュニティーカフェのある施設「WISE Living Lab(ワイズ リビングラボ)」が造られた。

同施設や「CO-NIWAたまプラーザ」で行われる活動、そして次世代モビリティーの取り組みは将来の多摩田園都市の姿を先取りするものとなる。これらをゆくゆくは多摩田園都市全体に広げていこうというのが東急電鉄のもくろみだ。

まちづくり「担いたくない」7割

一方で、こうしたコミュニティーづくりなどの取り組みが本当に持続可能なまちづくりにつながるかには疑問も残る。実際の住民との意識差が表れているからだ。

2012年に、美しが丘1丁目・2丁目・3丁目の6500世帯を対象に行われたアンケートでは「街づくりの担い手となる意向」について「どちらかといえば、やりたくない」が48.5%、「やりたくない」が21.4%と、約7割が「街づくりの担い手」となることに対してマイナスな回答をしている。また、地域との交流機会に関しても約3割が「必要ない」「どちらかと言えば必要ない」と回答している。

これでは住民が自ら主体となり、住民だけで自らまちづくりをしていくことは相当難しいと言わざるをえない。

すると、地域の人々をつなぐ企業やNPOなどの団体、アーティストなどの参加がカギになってきそうだ。しかし、多摩田園都市は不動産価格が高く、新しい店舗や事業を展開しようにもリスクが高い。

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