東急「田園都市」にも忍び寄る高齢化の危機 新移動手段やコミュニティー形成進めるが…
次世代モビリティーとともに、地域コミュニティーの活性化に向けた取り組みも進んでいる。
2018年10月、たまプラーザ駅近くのマンション「ドレッセWISEたまプラーザ」の1階と2階部分に、地域利便施設「CO-NIWAたまプラーザ」がオープンした。同施設にはオープンスペース・シェアワークスペース・保育園・コミュニティーカフェなどが入居するほか、郊外での雇用を生み出すべく設立された東急電鉄の子会社「セラン」の事務局や屋内・屋外2つのフリースペースも設けられた。
フリースペースは多世代のコミュニティーの交流促進や地域の活動の場の提供などの役割を担う。また、テナントやマンション管理組合、東急電鉄などからなるエリアマネジメント法人も立ち上がった。フリースペースにはそのスタッフも常駐し、コミュニティー形成の拠点としていく計画だ。
高齢化の進展に危機感
こうした地域交流施設をマンションの一部として造った背景には、東急側の多摩田園都市に対する危機感が見られる。
多摩田園都市は東急田園都市線の溝の口から中央林間の間にまたがる約50平方kmのエリアを指し、現在は約62万人が居住する。1953年、当時の東急会長・五島慶太が未開発だったこの地域を一大田園都市とする構想を掲げた「城西南地区開発趣意書」を発表したのがその始まりで、1959年には土地区画整理事業に着手し、宅地開発を行ってきた。
多摩田園都市の代表的な街はたまプラーザ駅周辺の「元石川第一地区」だ。1963年から開発が始まり、1969年に「美しが丘1丁目」「美しが丘2丁目」「美しが丘3丁目」と町名が変更された。この地区では歩道と車道を完全に分離し、住宅地内の車道は通り抜けができない袋小路状の「クルドサック」とする手法などを取り入れ、高級住宅化が図られた。
だが、開発の開始から60年を迎える中で、東急側の危機感は強くなっている。ある社員は「今から手を打っていかなくては(多摩田園都市の今後は)危ないというのは社内で共有されている事項だ」と言う。
その危機感とは、多くの郊外住宅地で指摘されている「住民の高齢化」だ。たまプラーザ駅周辺の高齢化率は美しが丘3丁目で30%を超える。同じ多摩田園都市内でも辺縁部では同じように高齢化率が30%近いエリアがいくつも見られる。
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